ハウスメーカー・工務店/ハウスメーカー・工務店の特徴

工務店・建築設計事務所の特徴と依頼先に選ぶポイント

この記事では、工務店(地域ビルダー)と建築設計事務所(建築家)について、依頼先として検討する際のポイントについて解説します。ハウスメーカー以上に個性的でバラエティーが豊富な人たちであるため、より慎重な検討が求められそうです。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

地域ビルダーは住まいづくりの主要な担い手

我が国の住まいづくりの担い手は、大きく「ハウスメーカー」、「地域ビルダー(工務店など)」、「建築設計事務所」に分かれます。今回の記事では、このうち工務店と建築設計事務所(建築家)の特徴について解説します。一言でいえば、個性豊かでバラエティーに富んだ住宅事業者の集まりであり、皆さんがより良い住まいづくりをするためには、それぞれの個性を理解することが何より求められます。

多くの方が次のような誤解をしているようです。「住宅を建てているのはハウスメーカーが圧倒的で、地域の工務店は少ない」と。これは大きな間違い。日本の住まいの主要な担い手は地域のビルダーたちです。
住宅街

日本の住まいの多くは地域のビルダーが建てている。そのビルダーの特徴をよく理解することが、このカテゴリーの人たちに住まいづくりの依頼をする上で第一歩になる(クリックすると拡大します)


1社が建てる住宅の数があまり多くないだけで、地域ビルダーの集まりとハウスメーカーの集まりが住宅を建てている数を比較すると、おおよそ7:3の比率になるようです。ですので、大変重要な存在なのです。

ただ、注意しないといけないのは地域ビルダーは様々な事業者がいるということです。「ハウスメーカーの特徴」でも多様な事業者がいると書きましたが、その多様さはハウスメーカーの比ではありません。

非常にバラエティーに富むビルダーの姿

従業員の面からみると、一人親方の会社もありますし、千人規模の会社もあります。住宅供給の数でみても、年間数棟から数千棟に及ぶ、ヘタなハウスメーカーをしのぐ規模がある会社もあります
リビング

ビルダーは得意とするデザインテイストも様々。写真は、自然素材による南欧風のデザインを得意とする会社が建てた住宅のリビングの様子(クリックすると拡大します)


業態でいえば、注文戸建て住宅を専門としている会社もあれば、分譲戸建て住宅が得意な会社もあります。賃貸住宅にも強みがある会社、リフォーム中心の会社、ゼネコン(建設会社)のような会社もあります。

デザイン一つとっても、伝統的な和のスタイルに加え、洋風デザイン(その中でも多種多様)を得意とする事業者もあります。また、郊外型、都市型のいずれかにノウハウが偏っているケースも見られます。

まだまだあります。一つひとつの事業者で業務の質が全く違います。耐震化や断熱化、省エネ化にしっかりと取り組んでいる会社もあれば、そのあたりは一般的な仕様で価格訴求ばかりが目立つビルダーもいます。
構造

日本の住宅工法で最も多いのは木造軸組工法(在来工法)。その中でも、ビルダーによって様々な構造上の工夫がある(クリックすると拡大します)


さて、そんなバラエティーに非常に富んだ地域ビルダーというカテゴリーの中で、皆さんにぜひ注目していただきたい項目があります。それは、会社の社員に対する遇し方で、事業者それぞれで大変異なります。

「女性の活躍推進」に積極的に取り組む企業も

現在、国では「1億総活躍」を打ち出し、企業に従業員の働き方改革を促しています。その中で女性の活躍推進も大きなテーマとなっていますが、当然ながらこれへの対応も事業者によってそれぞれです。
制震

木造軸組工法の制震装置の事例。このような仕組みを採り入れることで、大地震でも安心な住まいづくりに取り組むビルダーも多い(クリックすると拡大します)


地域のビルダーの中には、女性が大変活躍しているケースが多く見られます。働き方改革が本格的に議論される前からです。このようなことは大手ハウスメーカーの方が対応が進んでいるように思われるかもしれませんが、決してそうではないということです。

住まいづくりでは子育ての環境など、女性、中でも主婦の視点や感覚が重視されますが、上記のような地域ビルダーでしたら女性の営業担当者や設計担当者と出会え、結果的に皆さんにとって満足度の高い住まいづくりができることになるかもしれません。

もちろん、全てがすべてそうであるとはいいがたいのですが、質の高い地域ビルダーの多くがこのような側面を持っている、と私は感じてます。依頼先選びの一つの視点として参考にされてみてはいかがでしょうか。

経営者との距離が近いのがハウスメーカーとの違い

もちろん、地域ビルダーには良いところばかりではありません。これも社会問題化していますが、ブラック企業的な事業者ももちろん存在します。ただ、このことはどのような業態でもありえることです。
コスト

施主にとってのわかりやすさの追求に力を入れているビルダーも。写真はオプションによるバージョンアップをすると、住宅ローンの負担がどれだけアップするかを説明したもの(クリックすると拡大します)


企業規模が小さければ小さいほどブラック企業が多くなる傾向にあることは事実かもしれませんが、大手であれブラック企業は存在します。それは各種報道を目にしていれば分かることではないでしょうか。

何がいいたいかというと、依頼先として検討する事業者で働く人に注目すべきだということです。このことは記事「ハウスメーカーの特徴と依頼先に選ぶときのポイント」でも書きましたが、地域ビルダーにおいても同じことがいえるのです。

中でも、地域ビルダーはそれぞれの経営者の考え方が経営や住まいづくりのスタイルに明確に表れやすいのが特徴。経営者の顔が見えやすい、皆さんや従業員と経営者の距離が比較的近い、といえば分かりやすいでしょうか。

ですから、もし地域ビルダーを依頼先として重要視するのなら、「おたくの社長さんはどんな人?」などとスタッフに問いかけてみてください。そのスタッフが会社や仕事に満足しているのなら、具体的に経営者のこと、その想いを伝えてくれるはずです。
ZEH

国が普及を推し進めているものにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)がある。「ZEHビルダー」に登録している事業者か否かも、質の高い住まいづくりを行っている事業者かを見分ける要素になるかもしれない(クリックすると拡大します)


場合によっては、経営者その人に会わせてくれるでしょう。その人となりがわかれば、そのビルダーの信頼度も判断しやすくなるはずですから、できるだけ会わせてもらいましょう。ちなみに、大手ハウスメーカーでは経営者と会えることはほぼありえません。

個性的な住まいづくりを目指すなら建築設計事務所!?

次に建築設計事務所の特徴について。その特徴は顧客それぞれのニーズや事情に合わせ、1棟1棟に丁寧な設計を施した住まいづくりができることです。ですから、ハウスメーカーや地域ビルダーと比較して、より個性的な住まいづくりができると考えられています。

最もわかりやすい事例は、テレビ番組の「ビフォア・アフター」に出演しているような人たち。依頼人の困りごとや敷地の状況を丁寧に把握した上で、問題点を解消するアイデアを設計に盛り込むというイメージです。
設計士

設計士(私の古くからの友人)と棟梁による現場での打ち合わせの様子。このように現場に頻繁に出向き施工状況を確認する設計士は、一定の信頼をすることができるはずだ(クリックすると拡大します)


ハウスメーカーや工務店でももちろん同様のことはするのですが、工法や構造といった社内ルールの制約を受ける一方、設計事務所は予算の問題や建築法規上の範囲内で何にでも対応できるケースがあるというわけです。

また、経営者=設計者であることが多く、経営者の人となりや考え方が表れやすいという点では、地域ビルダー以上にその要素が強いといえます。考え方に共感するから依頼先に決めるというケースも多くあるようです。

その多くが個人の住宅以外に、集合住宅や商業施設、公共建築も手掛けています。ですから、それぞれで得意分野が様々です。有名建築家と呼ばれる人は、どちらかというと公共建築が得意な人が多いようです。

というより、大学や大学院の建築学科では個人住宅の設計についてはほとんど教えないのが実情。個人住宅はそれぞれの力量や経験に大きく左右されるというのが本当のところです。ですので、このカテゴリーでも人により住まいづくりの差が出るのです。

現場に出向くタイプかを確認しよう!

私がこのカテゴリーで特に注目すべきと考えているのが、「現場に出向く人か、そうではない人か」という点です。住まいづくりでは、設計者は全体のまとめ役、オーケストラの指揮者のような役割を担うべき存在ですが、これが現場での対応によく表れるのです。
現場

友人が設計した住宅の施工現場の様子。耐震性が高い鉄骨造が採用されていた(クリックすると拡大します)


顧客から住まいづくりを依頼された設計者は、その施工をビルダーや電気などの関係工事会社に依頼するのが一般的。ですから本来は、設計者がたびたび現場に出て工事の進捗状況を確認し、不具合があるとやり直しを指示したりすることが本来のあり方です。

特にデザイン性を重視した結果、設計事務所に依頼することが多いようですが、現場を重視しない設計者の場合、施工ミスを改善せずほったらかしにしていることもありえますから、後々後悔する可能性が出てきます。

建築設計事務所の住宅が「作品」とされることも特徴の一つです。これはわかりやすくいうと、設計や使われる素材が挑戦的、実験的な側面があるということで、短期的にも長期的に不具合が出た場合、改善が難しいケースがありえるということです。

ハウスメーカーの住宅が、ある程度検証が行き届いた設計スタイルや素材で構成される「商品」であるのとは対照的なわけです。挑戦的であることは建物の個性を左右することで決して悪いことではありませんが、品質や性能、耐久性などとのバランスが取れているか、しっかりと確認すべきです。

このように考えると、建築設計事務所に依頼する住まいづくりは、他と比べ最も難易度が高いといえそうです。しっかりと知識を蓄えて臨むべきもの、と私は考えています。

【関連リンク】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます