2017年4月に改定された仮設住宅に関する規定

応急仮設住宅(以下、仮設住宅)は、大規模災害で住まいを失った人たちのために提供されるものです。ただ、どのような経緯、仕組みで供給されるのかなど、詳しい内容をご存じの方は多くないようです。東日本大震災から2018年3月で丸7年になります。また、近い将来、南海トラフ大地震などの大災害の発生が懸念されています。ですので、これを機に仮設住宅について改めて理解しましょう。それが大災害に備える契機になればと考えます。

仮設住宅は災害救助法に基づき、自治体が被災された方々に貸与、提供されるものです。居住期間は原則2年とされています。建設される建物は、鉄骨プレハブ工法による組立タイプとユニットタイプが一般的です。
内部

仮設住宅内部の様子。こうみると広く見えるが、実際にはかなり狭い空間だ(宮城県名取市にある仮設住宅で撮影。クリックすると拡大します)


居住用の建物は玄関、台所、居室、キッチン、浴室、トイレなどが標準。50戸以上の仮設住宅が設置された場合などには、集会などに利用するための施設を仮設住宅と同様の工法で設置できることとなっています。

東日本大震災以降、そのあり方に変化がみられます。例えば間取り。2017年4月1日から1戸当たり29.7m2の規定が廃止されました。価格も1戸あたりの上限が従来は約266万円とされていましたが、同じく約552万円に改められました。

新たなタイプの仮設住宅も登場しています。東日本大震災では木造のほか、輸送コンテナによるものも建てられました。また、民間の賃貸住宅や空き家などの借上げ(見なし仮設)も行われました。

一般的な仮設住宅が供給される仕組みとは?

鉄骨プレハブ工法による一般的な仮設住宅が供給される経緯をみてみましょう。都道府県知事が災害救助法の適用を判断し、適用し仮設住宅の建設が必要とされた場合、(一社)プレハブ建築協会に建設が要請されます。
外観

仮設住宅の供給には、建物の建設だけでなく電気やガス、水道、駐車場などの生活インフラ整備も必要となる(クリックすると拡大します)


同協会はプレハブ(工業化)ハウスメーカーとシステム建築メーカーなどで構成される団体。各都道府県知事との間で「災害時における応急仮設住宅の建設に関する協定」を締結しています。

システム建築メーカーとは、普段は工事現場の仮設事務所のほか、店舗や倉庫、イベント会場などの部材を生産、施工している企業。その生産部材が災害時に仮設住宅の部材として活用されるわけです。

要請を受けると、同協会は各都道府県の担当部署と連絡を取り、現地に拠点を設けて建設に向けた体制づくりを行います。さらに都道府県と協会の会員企業が契約を結び、建設されるという流れとなります。

こうした経緯、特に行政とのパイプが予めあり、即応できる体制があることから、プレハブ建築協会の加盟会社(システム建築メーカー)は従来、大規模災害で仮設住宅建設を担ってきました。近くは熊本地震でも全体の84%を建設しました。

建設業界オールジャパン体制で対応した東日本大震災

ところが、阪神淡路大震災や東日本大震災のような我が国でも最大規模の災害では異なる建設体制が取られました。前者ではシステム建築メーカーだけでなく、大手ハウスメーカーも供給の一翼を担いました。

後者ではプレハブ建築協会の加盟企業だけでなく、その上位団体である(一社)住宅生産団体連合会に加盟する、日本ツーバイフォー協会、日本木造住宅産業協会、全国中小建築工事業団体連合会、輸入住宅産業協議会、リビングアメニティ協会の加盟企業も建設に参加しました。
空撮

宮城県石巻市のトゥモロービジネスタウン内に建設された最大規模の仮設住宅「仮設開成団地」の様子(プレハブ建築協会提供。クリックすると拡大します)


いわば住宅建設業界のオールジャパン体制で仮設住宅建設が行われたわけです。東日本大震災では新たに建設された仮設住宅が5万3194戸でした。ちなみに、これに借上げ仮設住宅6万8645戸が加わり、仮設住宅は総計12万1839戸が供給されたといいます。

これは東日本大震災の場合、新たに建設できる仮設住宅の限界がこれくらいだったということを意味します。では、今後、東日本大震災を上回る巨大災害が発生した場合、仮設住宅の供給はどうなるのでしょうか。

南海トラフ大地震では205万戸が必要になるとの試算も

2017年7月、内閣府の有識者会議がまとめた報告書によると、マグニチュード9クラスの南海トラフ大地震では、最悪の場合、最大約500万棟の建物が全半壊し、約205万戸の仮設住宅の供給が必要になるとしています。

これは東日本大震災による建物の全半壊(約40万戸、非住宅も含む)の約12.5倍です。このほか、首都直下地震においても最大約128万棟が全半壊し、約94万戸の仮設住宅が必要になると試算しています。
風除室

仮設住宅団地の敷地内の様子。東北エリアの寒冷な気候への対策として風除室(青い部分)が設けられている(宮城県名取市にある仮設住宅団地で撮影。クリックすると拡大します)


南海トラフ大地震は、地震による建物の倒壊や焼失に加え、津波の発生も見込まれています。さらに、津波被害は関東から九州、沖縄の沿岸地域という広範囲に及ぶとされていますから、これだけの大被害となり、それに伴い大量の仮設住宅が求められるのです。

東日本大震災での仮設住宅供給は総計約12万戸ですから、南海トラフ大地震ではその約17倍が必要となるわけです。東日本大震災で新規建設が供給されたのは約半年ですが、その基準で考えるなら、とても供給が追いつかないと思われます。

仮設住宅にはいくつかの問題点が指摘されているが…

ところで、東日本大震災では仮設住宅に対して様々な問題点が指摘されました。主なものとして以下があったと思われます。
(1)大手住宅会社だけで独占し、大儲けしているのではないか
(2)なぜ早く供給できないのか
(3)性能(断熱や遮音など)が低い建物をなぜ建てるのか
(4)住民の孤立を招くのではないか


皆さんが、最も興味を引くのが(1)だと思います。ただ、これは誤解。前述したように、仮設住宅の供給には国や自治体、業界団体が構築したシステムがあり、それに即応性があるため、まずはプレハブ建築協会のシステム建築メーカーに建設要請が行くわけです。

「大儲けしている」については間違いです。例えば東日本大震災では建設作業者を全国から集めました。資材や建設機械なども同様です。その費用を含めると、「大儲け」できる仕事ではなかったと考えられます。

(2)については、津波の被災地は平地が極端に少ないリアス式海岸エリアに分布していたか、いずれも津波被害に遭わない建設に適した土地を探す、あるいは新たに造成するのは大変困難でした。
雄勝

復興作業が続く宮城県石巻市雄勝町の様子。典型的なリアス式地形であり、このような場所には仮設住宅の建設はできなかった(2017年6月撮影。クリックすると拡大します)


(3)は、元々2年程度の居住しか想定されていないことが主な要因。東日本大震災では、断熱向上のための追加工事が行われたほか、風除室の設置、追い炊き機能の追加などが行われました。なお、プレハブ建築協会加盟企業が建設した建物ではメンテナンスも行われているとのこと。

(4)はもっともなことなのですが、東日本大震災のような大規模災害により混乱する中、対処が難しい問題だと思います。特に、入居の順番がくじ引きで決まるシステムでは解消が困難だと思われます。

ただ、一つ指摘したいのが、東日本大震災当時、仮設住宅に対するこのような問題意識や誤解が、スムーズな供給を阻害する要因となったことです。仮設住宅建設へ対してマスコミなどによる批判が高まり、仮設住宅供給者が混乱するシーンも見られました。
現場

仮設住宅の建設は、全国各地から動員され過酷な環境の中で作業にあたった人たちの存在抜きにして語れない(プレハブ建築協会提供。クリックすると拡大します)


批判は世論による供給への期待が過剰なほど高まったことの裏返しだと思われますが、実情に基づかない批判は良くないこと。次の大災害、中でも南海トラフ大地震などの極限状態ではあってはならないと考えます。

私たちの災害意識を反映する仮設住宅への関心

というのも、東日本大震災当時、仮設住宅の建設を担った人たちは、宿泊や食事などの環境が整わない中、「1日でも早く建てる」と懸命にがんばっていたからです。原発事故の影響が懸念された地域でも同様です。

最後に指摘したいのが、仮設住宅への関心は大災害発生直後に大いに高まるものの、その後は次第にその存在の重みが薄れてしまうこと。それは、熱しやすく冷めやすい、私たちの災害に対する意識とリンクしているとも思われます。
撤去

解体を前にした仮設住宅団地の様子。被災者の住宅再建や災害公営住宅などへの転居が進んだことから、現在では撤去された仮設住宅も多い(クリックすると拡大します)


南海トラフ大地震が発生するのは確実視されています。それまでの時間がどれだけ残されているのかは定かではありませんが、今回、ご紹介した仮設住宅一つ取っても対策は十分だとは言いがたいと思われます。

行政には、「公助」としてのできるだけ有効な対策を打ち出していただきたいですが、私たち国民も大災害の被害から「自助」する備えが必要と思われます。仮設住宅についての理解もそれを促すものと考え、今回、改めてクローズアップしたものです。


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