分譲住宅地において住宅を購入・建築することは、私たちにとって住まいを手にする選択肢の一つです。しかしながら、分譲住宅地といっても様々。どのようなことを基準に私たちは選べばいいのでしょうか。この記事では23年前に分譲が始まり、今も良質であると高く評価されている分譲住宅地を事例に考えていきます。大切なのは、「住民として果たすべき責任」。購入して終わりではないということです。

和風街区がある珍しい分譲住宅地

千葉県佐倉市に「佐倉染井野」という分譲住宅地があります。先日、私はこの分譲住宅地を取材して街なみを見学し、住民の方のお話も伺ってきました。概要は以下の通りです。
・開発面積 約110h(33万坪)
・計画人口 10730人
・計画住宅戸数 2618戸
・分譲開始 1992年(平成4年)


この分譲住宅地の特徴の第一は、景観が統一されているということです。大きく「和風」「洋風」「モダン」の3タイプの街区で構成されてました。ちなみに「モダン」とは、現代的な洋風というイメージです。

和風街区

和風街区の様子。ここでは隣家との境界は塀であるがその高さやデザインも統一されていた。門扉が本格的な和風デザインであることにも注目されたい(クリックすると拡大します)

このうち和風街区は、文字通り和風外観の住宅ばかりが建ち並ぶエリアですが、建物の瓦屋根や外壁、門扉、植栽などが統一されています。分譲開始当時、和風の建売住宅として発売され、大反響を呼んだといいます。

次に「緑を街づくりの主役」にしていることです。街区ごとにシンボルツリーや生け垣などの樹種や高さが決められています。細かいところでは、道路境界から50cmの部分に低灌木を植えるなど、これも街区内の統一感を演出しています。

これらは、街づくりの計画段階からルールを作って進めているものだといいます。コミュニティ・デザイナー(浅川潔・コミュニティ・デザイン代表)がランドスケープや、街なみのルールを作り、それに合わせて街づくりが継続的に行われているそうです。

簡単に説明すると元々、建売住宅(完成した建物)で販売されていましたが、販売するハウスメーカーがそれぞれ勝手に建物を建て、植栽を計画していては統一感が生まれません。2階建ての街区に3階建てが突然あったりすると変ですよね。それを「建築協定」などという取り決めでコントロールする人がいた、仕組みがあったというのがミソなのです。

建築協定というのは、国の建築基準法や自治体による地区計画条例にプラスして、「みんなで決めて守り、将来にわたり地域の住環境を保全し魅力ある街づくりを進めるための制度」です。

美しい景観は住民自らが参加して維持しているから

この分譲地では、例えば積水ハウスが販売している「コモンステージ染井野みかげ坂」(建築条件付き)のように今でも分譲が行われていますが、そこでも同様の開発計画に基づいています。このあたりが分譲地そのものの特徴になります。

洋風街区

洋風街区の様子。屋根や外壁の色合いが統一され、生い茂った緑と相まって閑静な住宅街を形成している(クリックすると拡大します)

さて、本当に注目すべき点は23年が経過した今でも美しい景観が維持されているということです。具体的には「緑地協定」という取り決めがあり、住民の中に「緑地協定運営委員会」が設立されています。ちなみに、今回の取材はこの運営委員会の方々に説明・案内をしていただきました。

運営員会は10年目くらいから住民主体になったといい、緑化についての管理を行っています。管理の内容は、中低木の剪定、刈り込み(生け垣・芝生など)、薬剤散布、施肥、除草で、これらを年1回から3回の頻度で行っているそうです。

当然、これらを実施するためにはお金がかかり、専門業者に委託しなければならない部分もあるわけですが、基金を創設するほか、年間に2~4万円の緑化維持管理費も徴収して取り組んでいるとのことです。

施肥や選定などの植栽の管理教室や樹木の特性の管理に関するガイドブックの作成、肥料の与え方や病害虫駆除のための冊子などを配布し、住民の啓蒙活動も行っているそうです。

このような取り組みは景観を維持するためであり、突き詰めると資産価値を維持するためですが、佐倉染井野の皆さんはこのほかに様々なことをなさっています。次のページではそれについての紹介するとともに、分譲住宅地選びで皆さんに参考になることをまとめてみたいと思います。