高度成長時代を象徴した1955年「ハウス55」からちょうど50年。この半世紀、住宅産業は省エネ・エコ・耐久性・耐震性・健康配慮…さまざまな技術革新を突き進み、世界でも稀にいる超先進住宅を供給するまでになった。しかし無我夢中で走り続けた半世紀を経て今、日本は経済も政治も、そして住宅産業も大きな岐路を前に「立ち停まらざるを得なくなっている」。その表れの一つが大手ハウスメーカーの「原点回帰」の流れなのかもしれない。これが何を意味しているのか。

“新商品”という名の1980年代復刻版

カタログ

アンティーク本のような「エクスクルーシブ」カタログ

昨年12月、2×4トップメーカーの三井ホームから「エクスクルーシブ」が発売された。1980年代に「コロニアル'80」からの伝統様式を再現した邸宅商品シリーズを同社では「エクスクルーシブ」シリーズと呼び、三井ホームのイメージを形成してきたが、今回はそのシリーズから特にトラディッショナルスタイルとして人気の高い邸宅を3つ選定。

具体的には、第一に、16世紀のイギリス王朝の建築潮流を汲み様式で、19世紀アメリカで流行した「チューダーヒルズ」タイプ。第二に、18世紀のアメリカ植民地時代の流れを汲む「コロニアル'80」タイプ、20世紀初頭アメリカのシカゴ郊外や中西部都市で普及したプレーリー(草原)調「ハートレー」タイプの3タイプ。いずれも、アメリカの古い映画に出てくるような、瀟洒でいかにも輸入住宅的な外観デザインだ。

そこに、三井ホームならではの新しいデザイン解釈と、現代テクノロジー「ウェルハーモニー(トータル空調システム+太陽光発電システム)」、室内に熱がこもらないオリジナル高性能屋根断熱パネル「ダブルシードパネル」などを搭載した、「古きよきデザインと最新性能」の2つが享受できる商品だ。

シンプルモダン全盛の揺り戻しか?

1985

1985年チューダーヒルズ調施工事例を載せ、古くならないデザインの強さを訴求

しかし、なぜ復刻版なのか。三井ホームといえば、創業1974年、日本で先駆けて北米生まれの2×4住宅を導入、日本に欧米様式デザインをいち早く取り入れ、洋風輸入住宅ブームの礎を築き、今も2×4累積建築棟数でも群を抜くリーディングカンパニーである。

同社関係者によると、今回のエクスクルーシブ開発の背景には、社内から『三井ホームの原点である、三井ホームらしい新商品を』という根強い声があったという。これは筆者の見解だが、かつてはクラシカルな輸入住宅らしいデザインをメインとしていた同社も、昨今の都市型シンプルモダン潮流のなかで、白を基調としたシンプルモダンな外観・内装インテリアデザインが多くなってきていた。

小冊子

エクスクルーシブの小冊子には、伝統クラシックインテリア読本も

しかし、シンプルモダン傾向は他社や業界全体の流れでもあり、シンプルデザインはデザイン性の趣向で差別化できないこともあること、また都市部の限られた敷地ではダイナミックな外観デザインで勝負することも難しく、見た目だけで言えば鉄骨メーカーでも木造メーカーでも、大手でも中小でもさほど大差がなくなり、差別化しにくくなっている現実もある。

「輸入住宅は流行りすたりがあっても、常に一定の根強い固定ファンがいます。シンプルモダンが主流となっている現代でも、洋風トラディッショナルスタイルは多くのお客様に愛され続け、暮らし継がれています。ビールやクルマでも復刻版が静かなブームになっている今、住宅で復刻版ができるのは、当社の輸入住宅らしい古くならないデザインならではという強みもあります。30年、50年経った家が全く古くない。逆に価値がある。これこそが当社のブランド原点であり、現在掲げている企業テーマ“暮らし継がれる家”にもつながると考えています」(同社関係者)

200年・300年経ったビンテージ住宅が新築価格の何十倍の価格で取引される北米。そこで生まれた同社の輸入住宅ならではの原点であり、それが強みになっているということかもしれない。では輸入住宅メーカー以外ではどうだろうか?