かつて日本では「空気と水はやタダで安全」だと信じられていました。しかし、水はもちろんのこと、空気も「タダ」とは言い切れなくなってきたように思います。というのは、空気清浄機の登場に代表されるように、より良い空気の環境で暮らしたいという気運は高まるばかりだからです。最近では住宅においては空気の質も快適さの重要な指針として注目されるようになってきました。今回の記事では空気の質のほか、温度環境も含めてその動向を考えていきます。

「PM2.5」が日本に到来 その影響とは?

PM2.5

「PM2.5」は人間の呼吸器系の奥深くまで入りやすく、人の健康に悪影響を及ぼすことが懸念されている(写真は東京都環境局ホームページより引用。クリックすると拡大します)

中国の大気汚染の原因となっている「PM2.5」が、日本においても問題となっています。私の故郷である福岡市では、市当局がホームページなどで測定値を発表しているほか、市民に外出を控えたり、屋外で洗濯物を干さないように呼びかけるなど警戒状態が続き、危機感が高まっているそうです。

「PM2.5」とは、粒径2.5μm(2.5mmの千分の1)以下の微小粒子状物質のことをいい、工場や自動車の排ガスなどに 含まれるススが主成分だそうです。東京都環境局によると「呼吸器系の奥深くまで入りやすいことなどから、人の健康に影響を及ぼすことが懸念される」といいます。

微小粒子状物質ですから、これが偏西風に乗って日本に飛来しているというわけですが、おかげで空気清浄機やマスクの売れ行きが非常に好調だと言います。それは日本に限った話でなく、原因となった国であり、かつ反日感情の高い中国でも日本製空気清浄機がよく売れているそうですから、なんとも皮肉な話ですよね。

PM2.5の話題を出したのはそのタイムリー性からですが、要するに私たちは空気の質についてかつてより非常にナーバスになっていることは確かだと思われます。今や掃除機にさえ空気清浄機能が付加されていることを願が得れば、ご納得頂けることだと思います。

より良質な空気の質と環境を実現する全館空調システム

そうした状況を反映し、住宅の世界でもより良質な空気の環境と質を実現する技術開発やその導入が相次いでいます。その最も象徴的な分野が全館空調システムの採用にみられます。大手ハウスメーカーでは独自にシステムを開発し、採用するくらい力が入っている分野です。

快適エアリー

セキスイハイムの24時間全館空調換気システム「快適エアリー」の空気の噴出口。床下から暖かな空気を建物全体に供給する(クリックすると拡大します)

全館空調システムとは元々、住宅内を温度差が少ない環境とすることで、より快適で安全な空間とすることを目指したものです。住宅内の温度差が大きいことは体への負担が大きいため、その差を少なくすることは健康への配慮として重要なのです。

特に、住宅内で高齢者による事故が発生しやすいのが浴室といわれています。一般的な住宅の場合、暖かい居室と冷たい脱衣所、さらに暖かな浴室と温度の差が大きく、それが高齢者にとって心臓機能への負担になってしまうわけです。こういった室内温度差が健康に与える影響を「ヒートショック」といいます。

こうしたことから全館空調システムでは浴室やトイレといった、一般住宅では空調が効かない場所も含め、住宅全体の温度差をほぼ一定に計画的に管理するシステムが導入されています。省エネ性能も、建物の気密・断熱性能の向上と相まって非常に高くなっています。

近年の傾向としては、このような全室の温度管理を行うだけではなく、空気清浄機能や湿度調整機能までを備えた多機能タイプが増えてきました。空気清浄とは、前述した化学物質(ただし、現時点でPM2.5に対応しているとは言い切れません)や花粉、病原菌、散り、ホコリなどの除去に対応したタイプもみられます。

全館空調システムを導入するには一定のコストがかかり、そのため多くのハウスメーカーではオプション扱いになっていることが多いようです。ただ、近年は全館空調システムを搭載せずとも、ある程度居室間の温度差を少なくする仕組みも導入されていますし、空気の質を高める取り組みも行われています。24時間換気システムなども含め、次のページでご紹介します。