スマートハウスというと昨年登場したばかりで、まだその特徴についてよく理解されていない方も多いと思います。ましてや、その集まりである「スマートタウン」(スマートシティやスマートコミュニティなどとも呼ばれています)に関してはなおさらのことでしょう。ただ、少しずつスマートタウンとよばれる街づくりの事例も増えています。スマートタウンについて知ることはスマートハウスを理解する近道。〈スマートタウン探訪記〉では、その実例を紹介するシリーズであり、第一回目は福岡市の「照葉スマートタウン」をご紹介します。

「CO2±ゼロ」の暮らしを目指す街づくり

「照葉スマートタウン」は、福岡市東区のアイランドシティで開発されている戸建住宅エリアのうち、「CO2±ゼロ住宅」で構成される街区のことをいいます。大手ハウスメーカーの積水ハウスと、九州住宅建設産業協会(地元の住宅会社の集まり)が共同で販売にあたり、最終的には全178区画となる計画です。

住戸

「照葉スマートタウン」に建てられた積水ハウスの分譲住宅。外構の緑も豊富で、将来的に樹木がより育つことで街全体の景観が向上することにつながる。電線が見当たらないことにも注目したい(クリックすると拡大します)

10月31日に現地で式典が行われ、私は第一期販売分の17戸を見学してきました。ここで「CO2±ゼロ」について少し解説をしておきます。これはCO2(二酸化炭素・地球温暖化の原因になる)を出さないのではなく、創エネや省エネ、蓄エネの技術を活用することで、「差し引きゼロ」とする考え方です。

創エネ・省エネ・蓄エネ技術というのは、次世代省エネ基準を上回る高気密・高断熱の構造躯体をベースに、太陽光発電システム(太陽光電池)やガスにより発電する燃料電池、さらには家庭用蓄電池などスマートハウスを構成するアイテムのことです。

人が生活する以上、必ずCO2が発生するわけですから、まずCO2の発生を極力減らし発生する分に相当するエネルギーを生み出すことでゼロするというわけです。「CO2±ゼロ」というのはスマートハウスだけでなく、地球環境に優しい住宅を検討される方には必ずついて回る考え方ですので、その考え方を覚えておいてください。

さて、具体的にどのような住宅が建っているかというと、積水ハウスは3電池(太陽光電池・燃料電池・蓄電池)を搭載する住宅「グリーンファースト ハイブリッド」と、W発電(太陽光電池・燃料電池)を搭載する住宅で構成。九州住宅建設産業協会加盟各社は、太陽光発電システムや燃料電池など創エネ設備を搭載したスマートハウスとなっています。

産官学&住民が一体となったプロジェクト

このうち、太陽光発電システムだけをみても5~6kWが搭載されています。通常3kW程度が普通ですから大容量といえます。試算によりますと、街が完成した場合、全体で約120万kWhを発電。それは電力消費量約86万kWhを上回り、残った分を近隣に供給できるそうです。「街全体が発電所」というイメージですね。

HEMS

HEMSの画面の様子。街びらきでは停電時を想定し、通常電源から自動で蓄電池からの電力供給に切り替わる様子も公開された(クリックすると拡大します)

もちろん、住宅全戸にはHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)も搭載。これによりエネルギーの需給状態を把握できるほか、より効率的なエネルギーの活用に役立てられますが、さらにそれを街全体に拡大した「TEMS」(タウンエネルギーマネジメントシステム)を取り入れるのも特徴です。

TEMSを導入することで各住宅の電気やガスの消費量が把握できますから、それらの削減量に応じてポイントが付与され、年間のポイントに応じて商品などと交換できるサービスも導入されるそうです。これは住民の環境・省エネ意識を高めるのに効果が大なのです。

また「グリーン電力証書」と呼ばれる、太陽光発電など自然エネルギーによって発電された電力を取引する制度を利用する仕組みも興味深いもの。その対価は住民組織が街のコミュニティ形成のための費用などとして活用するといいます。

このように、単に建物だけでなく様々な制度や仕組みづくりについて、行政や九州大学、西部ガスグループなど、地元が一体となって取り組んでいる点に「照葉スマートタウン」の最大の特徴があるのです。この開発事業は、国土交通省の「平成23年度第2回住宅・建築物省CO2先導事業」に、大規模な住宅が行く全体でのエネルギーマネジメントとして、全国で初めて採択されています。

では、「照葉スマートタウン」の基本的な特徴を理解していただいた上で、次のページではこの街を事例にさらにスマートタウンについて深掘りしていきます。