長期優良住宅/長期優良住宅のトレンド

長期優良住宅法と結露の「シメッた関係」(下)(2ページ目)

長期優良住宅法に連動・先駆ける形で、認定基準をのらんだ住宅が次々とリリースされています。法律文だけでは抽象的で分かりにくいので、今回は200年住宅認定基準を意識したユニークな商品をご紹介します。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

結露イメージ
いつの時代も住宅の天敵は「湿度」「結露」だった
前回の記事でも述べたように、住まいの耐久性の大敵は、構造・工法・材質を問わず「湿気」「結露」。日本で最も多いと言われる木造の場合、築30年で老朽化スピードが進み、雨水の浸入によらない湿気による老朽化が増え、築50年以上になると補修工事費が大きくなってあきらめてしまう傾向にあります(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合調べ)。

しかし、木造は木そのものにも調湿機能があり、うまく乾燥状態を維持できれば東大寺南大門(築800年)や法隆寺(築1300年)のように千年を超える耐久性を維持できるわけで、この「湿気」をいかに制御するかが、耐久性ひいては耐震性に大きく関わってくるわけです。

研究着手は1979年の第二次オイルショック直前

エス・バイ・エルの「壁体内換気システム」の歴史は驚くほど古く、1979年の第二次オイルショックで日本で「省エネ法」が制定された頃に、業界に先駆けて壁体内の通気・換気の研究に着手。「壁体内換気システム」誕生へのスタートラインになりました。二度のオイルショックで住宅の省エネが叫ばれるようになり、翌1980年に国が住宅の省エネ化を推進するための初代「省エネルギー基準」(次世代省エネ基準の前の基準)が策定され、これ以降、日本の住宅業界の省エネ・高気密高断熱化が一気にスタートしたわけですが、その国の動きに先駆ける形で同システムの研究に着手していたわけですから、いかに先見性があったシステムかが分かります。
建物システム図
住宅内の湿気を小屋裏から排出すると、自動的に床下に新鮮な空気が入ってくる「呼吸する住まい」

国の初代「省エネ基準」ができた1980年には、同システムを搭載し内部結露を防止した初の省エネ住宅を発売。いくつもの特許を取得し、1982年の東京国際グッドリビングショー(このショー、現在ではなくなってしまった)にてシステムを搭載した住宅「ハウス55」を発表。この「ハウス55計画」は、当時の建設・通産両省が国家プロジェクトとして提唱した新住宅供給システムで、エス・バイ・エル(当時は小堀住研)を含めたハスウメーカー3社がエントリーしました。

1980年代の高気密高断熱の弊害問題で一躍脚光

報道イメージ
1980年代以降、一気に高気密高断熱が広まったことで弊害が社会問題化した
さて一方、国が省エネ化を掲げたことで、住宅業界では一気に高気密・高断熱化が進みました。床・壁・天井を断熱材ですっぽり覆い、窓にはアルミサッシを採用したことで、確かに冷暖房効率は高くなったものの、一方で弊害も生じました。壁体内に結露対策を施さないまま高気密高断熱に走ったことで、結露によるカビやダニが繁殖、東京をはじめ各地で床材や壁内部の腐食が発生し、1980年代前半に社会問題化したのです。

こうしたことから1985年、旧住宅金融公庫の工事共通仕様書に結露防止を図る「壁体内通気工法」が追加され、同社のシステムが旧公庫の基準にも採用されました。この出来事でも、同システムの先駆性がうかがわれます。

解体イメージ
点検のための窓「Lupe」から構造躯体の乾燥度を定期的にチェック
以降、通気層を設けた同システムの防火性や省エネ性、断熱防露性でいくつもの検証実験や特許取得を重ね、床下と小屋裏の換気効率をより向上させ、通気経路のある屋根パネルも開発するなど、さらなる改良を重ねて現在に至っています。1979年以来、30年にわたりパワーアップした同システムの力が、こうした歴史を振り返ってみても納得できます。30年経った今も生き続け、むしろ人工エネルギーに頼らないシステムとして今また見直されているようです。

さて次ページでは、他の企業の事例も見てみましょう。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます