1.ピアチェックの義務化
2.新築マンション、戸建住宅の欠陥に備えた保険加入などの義務化
3.建物の完成前に自治体などの「中間検査」を義務化
この再発防止3つの方法の具体的な内容をみてみましょう。
再発防止策その1:ピアチェック
専門家の目が複数光ることで、構造計算の不正やミスをチェックすることができる。 |
もともと日本の設計システムでは、意匠設計が設計料をもらい、それを構造、設備設計に振り分けるという形が多く取られます。専門性の高い構造設計が意匠設計の元に組み込まれ、構造設計の責任の所在がはっきりしないなど、さまざまな点で問題があるといわれています。また、おおよそですが、全て合わせた設計料は工事費の3-5%程度とされ、構造設計の取り分はそのうち10%程度といわれています。ピアチェック導入による諸費用の増加は気になるところですが、構造設計にかかる費用が全体の総工費からみるとほんのわずかという現状では、大きな影響はないと考えてよいようです。
再発防止策その2:欠陥に備えた保険加入
2000年に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下品確法)では、重大な瑕疵があった場合に、住宅取得者が売主や建設業者などに対し無償修繕などの請求ができることを盛り込んでいます。しかし、瑕疵担保責任を負うべき売主や建設業者が倒産したり破産した場合は、機能しなくなってしまう補償制度です。そこで、万が一に備えて、保険に入っておくことを義務付けようというものです。この対策に関してもこれから具体的な検討が行われると思いますが、もし実際に瑕疵が起こると、損害賠償額は膨大なものになると考えられ、そのような保険が成り立つのかどうかがひとつの大きな課題だと考えられます。欧米では、保険をかけるため保険会社がピアチェックするケースもあるそうです。保険会社としても支払いは大変なので、真剣に構造のチェックをするでしょう。こういったダブルチェックの方法も一理あると思います。
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再発防止策その3:中間検査の義務化
中間検査では構造躯体の様子がわかる。大勢の目によって検査することに意味がある。 |
竣工検査では、出来上がった建物について、基準法にのっとった建物になっているかチェックしますが、建物が完成している段階のチェックのため、肝心の構造部分が内装の仕上げに覆い隠され見えない状況です。中間検査では、構造躯体を作っている最中の検査になるので、鉄筋の量や位置、柱の大きさなどのチェックをすることができます。工事途中で多くの人の目に触れることは、不正を減らし、また工事ミスも早期に発見できる可能性が高まり、耐震強度不足の建物を世に送り出すことに歯止めがかかると期待されます。
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安全なマンションを見極めるコツ
国土交通省が打ち出した構造計算書偽装の再発防止策の中間報告から、3つの方法を取り上げ内容をみてまいりました。これからは早い設立を目指し、近く建築基準法などの改正案を提出する見込みとのことです。
マンションの構造偽装がなぜ起こったか?を考えるとき、今まで、命を守る一番大切な部分である構造設計が、あまりに軽く考えられていたことに問題があったのではないかと感じました。今の建築界のシステムでは、設計は売主(=建設主)の意向を踏まえることが大前提です。建設主が、構造設計にもっと重きを置いて、「安全な設計をするように」と方向性を示せば、多くの構造設計の専門家は、喜んで従うでしょう。
「建築基準法を守っていれば良い」 「コストを下げろ」
このような観点でのマンション作りでは、もう世の中が受け入れません。建築基準法が国民の生命を守るための最低限の基準である(基準法第1条)ことを踏まえ、建設主、建設業者、設計者が、より高い品質の建物を作ることを目標に、モラルをもって関わっていくことが一番大切なことだと言えるでしょう。
【参考・関連サイト】
オピニオン番組「視点論争」米田雅子
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