寝室に必要な広さはどのくらい?
理想的な寝室の広さはどのくらいなのでしょうか。まず、寝室が「洋室」なのか「和室」なのか、そして就寝する人が1人なのか、2人なのか、子どもも一緒に3人なのか「人数」にもよりますし、「どんな家具を置きたいか」によっても変わってきます。また「寝室に求める機能」によっても必要面積は変わってきます。例えば「寝室は寝るだけ」でよければ布団を敷けるギリギリの広さでよく、「ソファーも置いてくつろげる空間にしたい」と考えるならプラスαの余裕が必要です。
今回は和室のケースと洋室のケースで、最低どのくらいあればよいか検証します。また、最近では人生の最後の時まで自宅で過ごしたいと願う人が増えていますが、介護などが必要になった時の寝室の広さについても見ていきましょう。
【目次】
和室に布団を敷くスタイル
和室に布団を敷いて就寝するスタイルは、昼は布団をしまって居室として使い、夜は寝室として使用するなど、空間をフレキシブルに使えるメリットがあります。それでは和室に布団を敷く場合を図にしてみましょう。 1枚の畳の大きさは90×180cm。敷布団のサイズは100×210cm、掛け布団のサイズは50×210cm。いずれも標準的な大きさです。実際に必要なスペースは?
布団の敷き方に工夫ができることが、和室の大きなメリットです。例えば、敷布団をピタリと寄せて敷くこともできます。スペースを節約して布団を敷いた場合の必要な広さを検証してみると、4.5帖の広さでは布団2組、6帖と8帖では布団3組が可能でした【図2】。布団を踏まないと出入りできなかったり、収納からものを取りだせないのは困ります。基本的に布団と収納や出入り口の間には50cm程度のスペースが必要と考えましょう。
寝室が和室の時に必要な広さ
【図1】【図2】から判断して、和室を「寝室」と使う場合の必要最低の広さは、1人で就寝する場合は4.5帖以上、2人~3人では6帖以上必要で、もし8帖あればゆとりをもって就寝が可能と考えて良いでしょう。では次に、洋室にベッドを配置した場合の最低寸法を見てみましょう。
洋室にベッドを置くスタイル
それでは次に洋室にベットを置くスタイルを検証しましょう。ベッドは床から40~50センチほどの高さがあるため、布団に出入りする時の動きに足腰への負担が少なく、毎日の布団の上げ下げもないことから中~高齢者の方にもお勧めの就寝方法です。洋室にベッドを置くスタイルでは、ベッドと家具、窓の位置などを十分検討しておきましょう。それでは図にして見てみましょう。
【図3】洋室にベッドを配した寸法の例。図の1マスは90cm四方。クローゼットはこの他についていることを想定。
いずれの図にもバルコニーなどへ出られる掃き出し窓を記入してみました。図からわかるように、掃き出し窓からバルコニーへ出るためには窓の前面に50cm程度のスペースが必要で、その部分ににはベッドをはじめ机、タンスなどの家具が置けないことに注意しなければなりません。
配置するベットの大きさを考える
寝室に置くベッドの大きさによっても、必要な部屋の広さは異なってきます。ベッドの基本的な寸法は以下となります。●タイプ別ベッドの「幅×長さ」
・シングルベッド 1000×2000
・セミダブルベッド 1200×2000
・ダブルベッド 1400×2000
・クィーンサイズベッド 1700×2000
・キングサイズベッド 1800×2000
基本的に、夫婦の寝室にはシングルベッドを2台置くことを推奨します。シングルベッドであれば、隣の人の動きの振動が伝わりにくく、安眠を確保しやすくなります。もし寝室の広さが充分でなかったり、そのほかに置きたい家具がある場合などは、夫婦が1台のベッドで就寝するという方法もありますが、幅1.4mのダブルベッドでは大人2人だとかなり狭めです。できたらクィーンサイズベッド以上をお勧めします。
洋室の場合は広さと部屋の形をチェック!
和室の布団就寝と異なり、ベッドはたやすく動かすことができません。従ってベッドをはじめとして鏡台、タンス、テレビなど、室内に置く家具の配置について事前によく確かめる必要があります。注意したいことは、クローゼットや掃き出し窓の前面には空間が必要ということで、気をつけないと「開かずのクローゼット」になってしまうことも。また、忘れがちですが枕元に携帯電話など小物を置く台も必要です。 和室の場合は畳敷きなので「モジュール」というものがあり、部屋の形はだいたい決まっていますが、マンションの洋室の場合、部屋の縦横寸法は自由に決められます。面積としてはある程度の広さを確保できていても、部屋の形がウナギの寝床のような極端な長方形であったり、反対に真四角の部屋もかえって使いにくかったりします。
ドアや窓のつく位置によっては家具がうまくおさまらない場合もあります。部屋の面積はあくまで目安であり、家具が上手に配置できるかどうかは図面上に家具をレイアウトして最終確認しましょう。
それでは次に、高齢になった時の寝室の必要寸法を見てみましょう。
高齢になったとき、必要な寝室の広さは?
それでは次に、高齢になったときの「寝室」の必要スペースを考えてみましょう。体に負担の少ないベッド就寝を前提とします。高齢になった時の寝室の使われ方は、就寝だけでなくテレビをみたり、読書したり、手紙を書いたりと、生活の中心となることが考えられるため、ベッドだけでなくテレビ、机、ベッドサイドテーブルなどを置くスペースと、万が一介助が必要となった時の介助スペースが必要です。
車イススペースも考慮すると最低6帖以上
車いすの利用を考えると、車いすの回転スペースとして直径1.5m程度の空間も確保したいものです。車いす利用や介助が必要となることも視野に入れた場合、理想的な寝室の広さは【図4】のように「6帖以上」となります。この面積にクロゼットは含まれません。高齢者の居室は快適な場所に設ける
これが8帖、9帖、と広くなるにつれ、介助者用のベッドにも使えるソファーベッドを入れることができたり、趣味を行うスペースができるなど利点も増えます。居間も兼ねる使い方をするため、通風・採光条件のよい快適な場所に寝室が設けられることが理想的です。またこの図のようにバルコニーや庭に直接出られる窓があると、布団を干しやすくて便利です。
窓際にベッドを置くと外の気温変化の影響を受けやすく、地震の際にガラスが飛び散って危険なので、ベッドは窓から離して配置するようにしましょう。
最低でも1室は6帖以上の広さがある間取りを選ぶ
「今はまだ介護を受けるかなんて考えられない」という若いご夫婦でも、何室かある個室のうち最低1室は6帖以上の広さがあれば、将来安心です。なお6帖とは9.72m2になります。また、その部屋はトイレや浴室と同一階であることも大切なことです。注意点としては、特にマンションでは一室当たりの面積を小さくして部屋数を増やす傾向があることです。小さい部屋がたくさんあっても使い勝手は良くありません。また、マンションではコンクリートの柱や壁があり、実際の有効面積はパンフレットなどに書かれた面積より小さくなります。
壁や柱を抜いた、壁のうちうちの寸法である『内法面積・ないほうめんせき』で計算した面積が、少なくとも1室は「9m2以上」ある間取りを選ぶとよいでしょう。内法面積がどのくらいあるかはデベロッパーや設計担当者に問い合わせてみてください。
特にRC造のマンションでは、モジュールのある木造と異なり寸法は自由に決めてあります。先ほども述べたように面積は目安としてとらえ、最終的には家具のレイアウト図を書いて確認しましょう。
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【参考資料】
【図解】高齢者・障害者を考えた建築設計 改訂版/楢崎雄之著/井上書院
第3版 コンパクト建築設計資料集成/日本建築学会編/丸善株式会社
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