建築行政の課題:確認申請の厳格化
大規模な建物になると構造計算書は膨大な量になります。 |
一連の耐震偽装事件では、民間の建築確認機関だけでなく自治体の建築主事が行った確認審査でも不正を見抜けませんでした。報道によると姉歯建築士による偽装物件は99件、そのうち42件は自治体が審査したものとなっています。
耐震偽装以前、民間・自治体の確認審査ともに提出された書類内容が建築基準法に適合するかどうかを確認するだけで、具体的な確認の方法を定めたものがありませんでした。そこでこの課題の対策として、平成18年6月に建築基準法を一部改正し、建築確認・検査の厳格化を図りました。具体的な内容を挙げてみましょう。
■大規模建築物の構造審査はダブルチェックを行う。
……構造計算適合判定制度といい、高さ20mを超える鉄筋コンクリート造の建築物などを対象に、構造審査においては構造の専門家によるダブルチェック(ピアチェック)を義務付けました。確認申請時に別の専門家のチェックを受けることで、再発防止に努めるものです。
■確認検査期間を延長する
……確認検査に要する期間を21日から35日(大臣認定プログラムを使用しないで構造計算した物件では最大70日)に延長しました。上記したピアチェックをはじめ、確認検査をしっかりと行うための期間延長です。
■小規模木造住宅の構造審査省略の見直し
……一連の耐震偽装では、マンションだけでなく、確認申請で構造審査が省略されていた小規模木造住宅でも報告されました。その対策として、今まで構造審査の省略が認められていた小規模木造住宅についても構造審査を課すことになりました。
■3階建て以上の共同住宅では中間検査を義務付け
……それまでは竣工時の完了検査のみであった3階建規模の建物でも中間検査を義務付けることで、工事中のチェック体制を強化しました。
一連の耐震偽装事件を受けて、現在すでに以上のような対策が取られています。このことで不正やミスを見抜く体制は強化されましたが、ピアチェックを行う構造設計の専門家が不足していることが課題に挙がっています。審査にかかる期間や費用が増え、改正後しばらくは住宅の着工戸数が大幅に減るなど混乱がみられましたが、現在では確認申請手続きの厳格化による混乱も納まってきたようです。
(2)建築士制度の課題は次ページで解説します。