マンション物件選びのポイント/マンションの構造・耐震性

耐震偽装を防ぐ3つの課題と対策(前篇)(3ページ目)

2005年11月の姉歯一級建築士による構造計算書偽装事件から3年が過ぎました。あの事件はなぜ起こり、その後どんな対策が取られたのでしょうか?明らかになった3つの課題と対策を前篇・後篇に分けてまとめます

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

建築士制度の課題:能力向上や専門分化

建築士試験を受けるために設計または現場監理の実務経験が必須になった。
建築士試験を受けるために実際の設計または現場監理の実務経験が必須になった。
耐震偽装問題では、建築士の能力や構造・設備などの専門分化が不明瞭であった点、建築士事務所の業務の方法、違法行為への罰則などについての課題が明らかになりました。こういった課題についても平成18年に建築士法の法改正を行い、法整備が行われました。内容は以下の通りです。

■建築士の能力向上のために定期講習を義務付け
……終了者には写真入りの免許証を発行。必要であれば提示してもらうことも可能。
■建築士試験の受験資格を見直し
……受験資格を得るには指定の学歴プラス設計・工事監理の実務経験が必要となった。例えばデスクワークのみでは受験できなくなる。
■高度な専門知識のある建築士による適合チェック
……一定以上の規模の建築物の設計には、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士など高度な専門能力をもつ建築士による法適合チェックが必要。
■設計・工事監理の業務の適正化、情報開示
……設計事務所の管理建築士になるには実務経験や講習の受講が必要。設計・工事監理を行う際には発注者に対し重要事項の説明や書面による確認を義務付け。
■建築士の違法行為に対する罰則の強化
……名義貸し、違反行為、信用失墜行為の禁止を定め、違反者に対する処分を強化 等々

マンションなどの大規模な建物を設計する場合、意匠・構造・設備・電気、それぞれの専門知識を持つ建築士がそれぞれの分野を責任をもって設計をするよう制度が整えられました。また戸建住宅の設計・工事監理においても、発注者に対し設計者による説明義務が加えられるなど、発注者が安心できるよう法整備されました。

今回まとめた建築確認申請の厳格化、建築士制度の見直しは、今後耐震偽装などが起きないために「入口」を厳しくする対策となります。しかし前ページで述べたように、構造の専門家不足などの影響で100%未然に防ぐことは難しいのではないか、という懸念も聞こえています。そこで次に消費者=住宅購入者保護の政策が生きてくるのです。万が一の場合に瑕疵担保責任が確実に履行されるための法が今年度中に本格施行されます。その「住宅購入者の保護」については続編でお伝えします。ぜひ引き続きご覧ください。

【関連記事】
耐震偽装を防ぐ3つの課題と対策(後篇)
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【関連リンク】
耐震強度偽装問題(オールアバウト)

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