不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

地目の種類と注意点

不動産を購入するときに、みなさんが目にする土地の登記事項証明書には「地目」という欄があります。これはどのようなものなのか、不動産登記法による地目の種類や注意点などを知っておきましょう。(2017年改訂版、初出:2003年5月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.52】

不動産の登記のうち、土地についての表示項目には「地目(ちもく)」というものがあります。地目とはいったい何なのか、その種類や注意点などについて簡単に整理しておきましょう。


地目とは?

地目とは、不動産登記法に定められた土地の区分で、現況の用途、利用目的などによっていずれかに分類されることになっています。不動産登記法(不動産登記規則第99条)によって規定されている地目は全部で23種類であり、これ以外の地目を使うことはできません。

【地目の種類】
田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼(ちしょう)、山林、牧場、原野、墓地、境内地(けいだいち)、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝(せいこう、いこう)、保安林、公衆用道路、公園、雑種地

ちなみに、不動産登記法の改正(2005年3月施行)以前は、旧不動産登記法施行令第3条による地目が上記のうち学校用地、鉄道用地を除く21種類に規定され、それとは別に旧不動産登記事務取扱手続準則(1971年)第118条によって学校用地、鉄道用地の表示が定められていました。

売買対象となる土地の地目のなかで最も一般的なものは「宅地」です。一戸建て住宅の敷地だけでなく、マンションの敷地、ビルや商業施設の敷地などもすべて「宅地」となります。

不動産の取引にあたり、「宅地」以外に比較的よくお目にかかるのは「畑」「山林」「雑種地」「公衆用道路」あたりでしょうか。たまに「田」や「用悪水路」なども出てきます。地方へ行くと少し状況は変わるかもしれませんが……。

なお、同じ土地のなかに用途の異なる部分がある場合には、土地全体の状況によってどれか一つの地目に決められます。最終的に地目を認定するのは登記官です。


登記地目と現況地目の相違

登記された地目と、実際に現在利用されている地目(現況地目といいます)が、一致していることが望ましいのはいうまでもありません。しかし、実際には現在「宅地」であっても、登記上では「畑」や「山林」のままになっている土地が数多くあります。

法律の規定上では、利用目的の変更によって地目が変わったとき、土地の権利を持つ者は変更があった日から1か月以内に、変更登記の申請をしなければならず、それを怠れば10万円以下の過料に処せられることになっています。

その変更登記の申請をしないままの土地も多いわけですが、少なくとも市街化区域内で考えるかぎり、とくに支障がないのも実情です。ただし、市街化調整区域内の場合には、現況地目との相違によって少し厄介な事態になるケースもあるでしょう。

ちなみに、地目については法律の規定上、登記官の職権による変更登記も可能です。

不動産情報などにおける「物件概要」では、登記地目と現況地目の欄がそれぞれ設けられていることも多く、これが分けられていない場合は登記と現況が一致しているか、あるいは現況地目が優先されています。

また、土地の価格評価や課税については、あくまでも現況により判断されます。

なお、地目が「畑」や「山林」などの場合には、たとえば地積が165.88平方メートルなら、登記のうえでは小数点以下が切り捨てられて165平方メートルと表示されます。これを単純に地目変更して「宅地」にすると、その地積は165.00平方メートルと表示されてしまいます。


農地を転用するとき

いま現在、実際に畑などとして利用されている土地を売買する際は、農地法による手続きが必要です。詳しくは ≪農地法による制限と土地売買≫ で解説していますが、市街化区域内の農地を売買して宅地に転用しようとするときは、あらかじめ農業委員会へ届け出なければなりません。


地目について注意すべき点は?

地目をみる際に注意しなければならないのは、過去の履歴です。

いま現在の登記された地目をみるだけでなく、過去の地目もチェックして「田」や「池沼」「用悪水路」「ため池」など、水に関係する地目だった場合には注意しなければなりません。過去の地目が「墓地」だった場合も、別の意味で注意が必要でしょう。

また、敷地の前の道路の地目が「公衆用道路」だったとしても、それはあくまでも不動産登記法による分類でしかありません。公衆用道路であっても建築基準法上の道路だとはかぎらず、公道かどうかということとも関係がないので早合点は禁物です。


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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