住宅や土地を購入するとき、売買契約を締結する前に媒介業者(または売主業者など)の宅地建物取引主任者から重要事項の説明が行なわれることを知っている人も多いでしょう。
重要事項説明書の作成や実際の説明にあたって、不動産業者は事前に綿密な調査を実施し、何らかの問題点があればそれを買主(買主になろうとしている人)へ伝えなければなりません。しかし、それだけで十分だとはいえず、自分で調査をしたほうがよい場面もありそうです。
重要事項説明にはグレーゾーンがある
不動産業者を指導する立場にある行政側としては、「買主に不利となる可能性のある事項はすべて説明せよ」ということになるのですが、その具体的な判断基準があるわけではありません。もちろん、物件そのものに何らかの問題点があれば一様に説明対象となりますが、これが周辺環境などのことになってくるとやっかいです。
ものごとの感じ方や考え方は人それぞれ違うわけであり、「物件周辺に存在する嫌悪施設は必ず説明される」と言ったところで、嫌悪施設に該当するのかどうか判断の分かれるグレーゾーンは必ず存在します。
また、同じ嫌悪施設にしても物件の隣地だったり道路を挟んで向かい側だったりすればたいていは説明されるでしょうが、それが物件からどのくらい離れていれば説明するのか、あるいはしないのか、といった判断はすべて不動産業者の主観によらざるを得ません。
買主によっては「その施設が駅や学校へ行く途中にあるだけでもイヤ!」ということがあるかもしれませんが、とくに何らかの理由や心理的影響で他人よりも嫌悪の度合いの激しいものがある場合などに、その説明までも不動産業者へ求めるのには無理があるでしょう。
もちろん、気になることがあれば積極的に不動産業者に告げて事前調査を依頼することも必要ですが、嫌悪施設だけでなく、物件の利便性や周辺環境の問題などで不動産業者の調査が行き届かない部分、あるいは個人の感じ方などによって認識が異なる部分も生じます。
物件を購入した後にそこへ住むのはあくまでも自分たち家族なのですから、何もかも不動産業者に任せきりにするのではなく、自分でも積極的に調べてみることが大切です。
自己調査の主なポイント
□ | 自分の主観で考える嫌悪施設などがないか? |
□ | 最寄り駅や学校までの道のりはどうか? 夜間に暗過ぎることはないか? |
□ | 普段の生活圏内の道路で車の往来はどうか? |
□ | 近所のスーパーやドラッグストアなどは安いか? |
(年間で10万円以上も生活費に差が出ることもある) | |
□ | 病院は近くにあるか? |
(病気がちな人であれば病院が近いことはありがたいものの、人によっては病院が近くに存在することを嫌う場合もある) | |
□ | 最寄り駅から通勤や通学をするときの電車の混み具合はどうか? 本数は十分か? |
□ | 近くの公園に集まるお母さんたちの雰囲気はどうか? |
□ | 車や工場の騒音や振動はどうか? |
(平日、休日、昼間、夜間などで異なる場合もあるため、不動産業者が問題点を見落とすことも考えられる) | |
□ | 周辺に不審者が出没していないか? 意地の悪い人は住んでいないか? |
(事前に調べること自体が難しいかもしれないが……) | |
□ | マンション内で住民同士の派閥争いが起きていないか? |
□ | 子どもが入り込むと危険そうな廃墟建物や空地などがないか? |
まだまだいくつも挙げることができそうですが、物件の周辺を調べるときは事前に不動産業者や図書館などで住宅地図のコピーを入手しておくとよいでしょう。自治体によっては地域マップを発行しているところもあるようです。
地盤や地勢に起因する地震災害や水害などに対する情報も重要ですが、これについては残念ながら不動産業者による調査が十分でないケースも多いようです。自然災害の防止に関する資料などを積極的に公開している自治体もありますから、これらも自分で調べてみるとよいでしょう。
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