不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

不動産登記法の大改正で何が変わった?

不動産登記法が明治32年に制定されて以来、初めて全文が改正され、2005年(平成17年)3月に施行されました。オンライン申請を前提とした不動産登記法の改正点について、主なポイントを知っておきましょう。(2017年改訂版、初出:2005年3月)

執筆者:平野 雅之


1899年(明治32年)に制定された不動産登記法が105年の時を経て大改正され、2004年6月18日に公布、2005年3月7日に施行されました。

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住宅を購入したときなどの不動産登記申請手続きが全面的に変わった

不動産登記法は、それ以前にも書式の整備や区分所有建物の登場、登記事務のコンピュータ化などに伴い、その都度少しずつ改正されています。

ところが、今回の改正ではその全文が書き改められ、従来とまったく異なる規定や概念なども生まれています。不動産登記法の改正に伴い約130もの関係法令が改正されるなど、まさに大改正といえる内容でしょう。

普段は馴染みが薄く、住宅を購入した際などの登記申請も司法書士に委任するケースが大半ですから、不動産登記法の改正が皆さんの生活に直接の影響を及ぼすわけではありません。

しかし、住宅を購入したり売却したりする際には是非とも知っておきたい部分もあります。

そこで今回は、申請手続きの変更など実務上の詳細な事項の説明は抜きにして、住宅を購入するうえで、一般消費者も理解しておきたい不動産登記法の改正点などをまとめてみました。


すべての法務局でオンライン化が完了

不動産登記法の改正は、登記事務のコンピュータ化、オンライン化を前提としたものです。

新不動産登記法が施行された時点で、全国の法務局(本局・支局・出張所)のうち、不動産登記事務がコンピュータ化(一部コンピュータ化を含む)されていたのは約7割程度でしたが、比較的早くすべての法務局でコンピュータ化が終わりました。

そして、オンライン化は改正法の施行から約2週間後の上尾出張所(さいたま地方法務局管内)を皮切りに順次進められ、2008年7月14日までに原則としてすべての法務局で切り替えが完了しています。

ただし、一つの不動産についてオンライン化された後に行なわれる最初の登記は原則として書面申請となるほか、売主または買主が「個人認証」を受けていない場合も書面申請となります。


不動産権利証が無くなった!?

これまで不動産にとってたいへん重要な書類とされてきた権利証の制度ですが、改正法によりこれが廃止されました。

現在は、登記手続きが完了すると従来の権利証(登記済証)に代えて「登記識別情報」(数字とアルファベット12桁の組み合わせ)が新たな登記名義人へ通知される制度となっています。

また、これとは別に新たな登記名義人へは「登記完了証」が交付されます。

登記識別情報は登記された権利に関する、いわば暗証番号(パスワード) のようなものであり、受け取った者が厳格に管理しなければなりませんが、万一の漏洩や忘失などを避けるため、本人の希望により「これを発行しない」こともできます。

ただし、この場合には次回の登記のときに、本人確認のための手続き(手間と費用)が別途かかることになります。

なお、権利証の制度が廃止されたからといって、それ以前から不動産を所有している人の権利証が不要になったり、単なる紙切れになったりするわけではありません。

一つの不動産(土地または建物)について、オンライン化後に行なわれる最初の登記には権利証を添付する必要があり、これが何十年後となっても同じことです。

今回の不動産登記法改正によって国内から完全に権利証が無くなるのは、ひょっとしたら来世紀のことなのかもしれません。


登記簿謄本・抄本が無くなった!

不動産登記法の改正よりも早く、法務局ではコンピュータ化が進められており、現在ではすべての法務局がコンピュータ化されました。

それによって発行されなくなったのが登記簿謄本・抄本です。

従来は登記された内容を証明する書面として、バインダー(簿冊)に綴じられた登記簿をコピーし、穿孔のうえで登記官が証明印を押したものが発行されていました。これが登記簿謄本(一部を証明したものが抄本)だったわけです。

しかし、コンピュータ化された登記記録を証明するために出力したものは「登記事項証明書」と呼ばれます。

これまでどおり「登記簿謄本」と言っても話は通じますが、次第に使われない言葉になっていくことでしょう。


登記原因証明情報の作成が義務に

従来の登記申請では、多くの場合に登記申請書と同じ内容の申請書副本を提出し、これが権利証にもなっていたのですが、今回の改正で副本制度も廃止されました。

それに代わって新たに「登記原因証明情報」の制度がつくられ、すべての登記申請に対してその提出が義務付けられています。

ただし、不動産の売買における登記原因証明情報は司法書士が作成を代行するケースが多く、一般消費者がとくに「変わった」と感じることもないでしょう。


その他の改正も盛りだくさん

これまでに説明した項目以外にも、登記記録様式の一部改正、不動産特定番号の導入、保証書制度の廃止とそれに代わる事前通知制度の創設、司法書士などによる本人確認情報の提供制度の創設、登記官による本人確認制度の創設、オンライン申請における電子署名や電子証明書(従来の印鑑証明書に代わるもの)の利用など、新不動産登記法による改正点は盛りだくさんです。

また、司法書士による売主・買主の本人確認も、これまで以上に厳格化されています。これから買主あるいは売主になる人は、快く協力するようにしなければなりません。

なお、新しい不動産登記法については、法務省による「新不動産登記法Q&A」のページも公開されていますので参考にしてください。


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登記識別情報とは?
登記を信じちゃいけないの?
不動産の権利証とは何か?
法務局ってどのようなところ?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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