土地の評価方法
相続財産の評価方法で最も複雑なのが土地です。土地の評価には基本的に路線価を用い(路線価方式)、路線価が定められていない地域では固定資産税評価額にあらかじめ定められた一定の倍率を掛けて(倍率方式)計算をします。さらに、路線価方式の場合には個々の土地の形状や道路の状況などに応じて、補正や加算を行なうことになっています。
□ 奥行価格補正
土地形状の奥行が短い場合、あるいは長い場合に価格を減額するもの。奥行の長さおよび地区区分により補正率が細かく定められています。 |
□ 側方路線影響加算
角地で2方向に道路がある場合、またはひとつの道路が屈曲していることにより角地状になっている場合(準角地)に価格を加算するもの。地区区分および角地、準角地の別で加算率が定められています。 |
□ 二方路線影響加算
敷地の南側と北側など、両側に道路がある場合に価格を加算するもの。地区区分ごとに加算率が定められています。 |
□ その他の補正
敷地の形状、形態、面積により、間口狭小補正、奥行長大補正、がけ地補正(斜面の方向で異なる)、不整形地補正(地積により異なる)などが定められています。 |
借地権による土地の場合には「財産評価基準書」による借地権割合(路線価図に記載されています)を自用地の価格に掛けて計算することになっていますが、定期借地権の場合にはこれと異なる評価方法が定められています。
また、借地権の土地として第三者に貸している場合(地主の場合)には、自用地の価格から借地権の価格を差し引いて計算することになります。
さらに、敷地の一部あるいは全部にアパートや賃貸マンションなどを建てて貸家としている場合には、その敷地の評価は一定の計算式を用いて減額することになっています。
建物の評価方法
建物の評価方法は土地の場合ほど複雑ではなく、基本的には固定資産税評価額をそのまま用いることになります。ただし、第三者に貸している建物の場合には、一定の計算式にもとづいて減額をします。小規模宅地における特例
被相続人が居住していた建物の敷地を配偶者や同居親族が取得した場合など(特定居住用宅地等)には、一定面積までを限度として相続税評価額の80%を減額する措置があります。これが「小規模宅地等の減額特例(評価減)」といわれるものです。この面積はこれまで240平方メートルとなっていましたが、2015年1月1日からは330平方メートルに拡大されました。
実際にはもう少し細かな規定もありますが、たとえば被相続人が居住していた住宅(敷地面積は上限以下)を、同居していた子が相続して申告期限まで引き続き所有かつ居住していた場合、土地評価2億円・建物評価2千万円であっても、相続税申告時には土地評価4千万円・建物評価2千万円として計算することができます。
また、特定居住用宅地等のほかに、特定事業用宅地等にかかる小規模宅地等の評価減(限度面積400平方メートル、減額割合80%)や、貸付用宅地等に対する小規模宅地等の評価減(限度面積200平方メートル、減額割合50%)などもあります。
なお、この「小規模宅地等の減額特例」により、従来は主だった相続財産が自ら居住していた住宅だけの場合に相続税が課税されないケースが大半だったものの、2010年の税制改正に伴い制度適用の厳格化が図られ、特例が適用されないケースも多くなりました。
以前は宅地の一部が該当すれば全体に適用、共同相続人のうち一人でも該当すれば全員に適用などとなっていたものが、改正後は相続した不動産の一宅地ごと、部分ごと、相続人ごとに適用の可否が判断されるようになったのです。
また、被相続人が介護付き有料老人ホームに入居していたときなどに、もともとの自宅が「自宅ではない」と判断されたり、内部で行き来ができない完全分離型の二世帯住宅では「同居ではない」とみなされたりして、特例の適用が受けられないケースが生じました。
その不都合が見直され、2014年1月1日からは老人ホームへの入居や二世帯住宅における適用要件が緩和されています。
相続税の申告と納税
相続や遺贈により財産を取得した場合、被相続人が死亡した日(相続の開始があったことを知った日)の翌日から10か月以内に、「被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署」へ申告をし、かつ、納税することになっています。相続財産が基礎控除額以内のときは申告をする必要はありませんが、前記の「小規模宅地等の減額特例」の適用を受ける場合および配偶者の税額軽減を受ける場合などには、納めるべき相続税額がなくても申告をしなければなりません。
申告時に相続税額の全額を納付することができない場合、20年を上限(課税対象財産の種類等により限度年数は異なる)として「延納」の制度もありますが、代わりに利子税が課せられることになります。
また、延納による納付も困難な場合には相続財産による「物納」の制度もあります。いずれの場合も納付期限までに申請をすることが必要です。
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