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筆界特定制度の基礎知識(2ページ目)

「筆界特定制度」が、土地の境界紛争を従来よりも迅速に解決することを目的として2006年に創設されています。まだあまり聞き慣れない「筆界」という用語の意味と、制度の概要を確認しておくことにしましょう。(初出:2006年1月)

執筆者:平野 雅之


筆界特定に法的な強制力はない?

この「筆界特定制度」は、あくまでも “過去に定められた” もともとの境界(初めに登記されたときの境界)の位置を調査して、それが現地のどこになるのかを明らかにし、「筆界特定登記官」が認定するものです。したがって、新たに筆界の位置を設定するものではなく、また筆界の位置を確定させるための法的な効力もありません。

そのため、筆界特定の結果に不満がある場合、あるいは当初から「公法上の境界を確定させること」を目的とする場合には、従来どおり境界確定訴訟などによって裁判所に決めてもらうしかないことになります。しかし、「筆界特定制度」のもとで専門家の調査を経て認定された内容は、裁判において大きな証拠となり得るものですから、特定された筆界と境界確定訴訟などで決められる境界とが違う結果となるケースは極めて稀なものと考えられます。


筆界特定に関する重要事項説明は?

田園地帯
このような場所なら、少しぐらい境界がずれていても平気だが…?
筆界特定の対象となった土地については、その土地を管轄する法務局に「筆界特定書」が保管され、その写しを第三者が取得することもできます。しかし、全体からみれば「筆界特定書」が備えられている土地の割合はわずかであり、ほとんどの土地には「筆界特定書」がないため、冒頭に説明した「私法上の境界」と「公法上の境界」とが異なる可能性を少なからず内包していることについては留意しなければなりません。

「筆界特定制度」が施行されたことにより、「筆界特定書がある」「筆界特定申請中である」あるいは「筆界特定がされていない」といった内容が、宅地建物取引主任者から重要事項として説明される場合もあるでしょう。

「筆界特定書がある」ときには必ず説明されるでしょうが、その場合は添付された書面の内容をしっかりと確認することが必要です。さらに筆界特定自体は必ずしも実測を伴うものではありませんから、その後に実測をすることによって敷地面積が減少する可能性も考えられます。その可能性があるのかどうか、十分に説明を受けることが大切です。「筆界特定申請中である」という場合も、同様の可能性を考えなければなりません。

その一方で、「筆界特定がされていない」ときには何も説明されない場合が多いでしょう。もし「筆界特定がされていない」ことの事実が説明されたとしても、国内の大半の土地がそうなのであり、それ自体はあまり心配いりません。それよりも「現に境界紛争が生じている」あるいは「境界の相違が推測される箇所が存在する」といった事実を説明された場合のほうが重大であり、また、現実的に考えれば境界紛争よりも越境の問題を抱えた土地のほうが多いことでしょう。

なお、既に境界紛争などが生じている土地について、以前はそれが解決するまで売買契約を取りやめるか、買主が引き継いだうえで解決する(この場合、当然ながら買主は一般の消費者ではありません)ことが行なわれていました。しかし、「筆界特定制度」が施行されたことによって、一般の買主が先に売買契約を締結し、筆界特定の結果を待って決済をしようとするケースもあるでしょう。その場合、筆界特定による結果を想定してあらゆるパターンに対応できる取り決めをするとともに、通常の売買契約よりも引渡しまでの期間が相当に長いのですから、その間の価格上昇や下落、金利の変動といったリスクも十分に考えることが必要です。


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