不動産売買の法律・制度/宅地建物取引業法詳説

宅地建物取引業者名簿とその閲覧

宅地建物取引業者について国土交通省や都道府県にその名簿を備えること、およびこれを一般の人が閲覧できることなどが宅地建物取引業法に定められていますが、それによってどのような情報が分かるのか、法の規定を確認しておきましょう。(2015年改訂版、初出:2009年6月)

執筆者:平野 雅之

-宅地建物取引業法詳説〔売買編〕 No.5-

宅地建物取引業法には、免許を受けた業者に関する名簿を国土交通省や都道府県に備えることや一定の内容について一般の閲覧に供することなどが定められています。宅地建物取引業者との取引で不審な点があればこの名簿を閲覧することもあるため、どのような規定になっているのかを知っておきましょう。

免許証の交付
免許換えの場合における従前の免許の効力
宅地建物取引業者名簿
変更の届出
宅地建物取引業者名簿等の閲覧

宅地建物取引業者名簿の登載事項は?

宅地建物取引業者名簿に登載される事項は、おおむね第8条に書かれているとおりですが、このうち「事務所ごとに置かれる第31条の3第1項に規定する者」とは、要するに専任の宅地建物取引士のことです。

また、「第50条の2第1項の認可を受けているときは、その旨及び認可の年月日」とありますが、これは「投資信託及び投資法人に関する法律」のことで、一般消費者の取引相手となる宅地建物取引業者にはあまり関係のない部分でしょう。

「その他国土交通省令で定める事項」については、宅地建物取引業法施行規則第5条により、宅地建物取引業者に対する行政処分に関することや、宅地建物取引業以外の事業をしているときの内容などが規定されています。


宅地建物取引業者名簿などの閲覧場所は?

第10条の規定により、宅地建物取引業者名簿や免許申請書類などのうち、一定のものについては一般の人が誰でも閲覧できることになっています。

閲覧場所は、都道府県知事免許の宅地建物取引業者であれば、それぞれの免許証を交付した都道府県庁内の不動産業を管轄する部署です。都道府県のホームページなどを調べれば、たいていは閲覧場所の案内などが掲載されています。残念ながら他の都道府県で免許を受けた宅地建物取引業者についての書類を閲覧することはできません。

なお、北海道の場合は免許を交付した各振興局の建設指導課または北海道庁建設部建築指導課(石狩振興局以外の13振興局分)となります。

その一方で、国土交通大臣免許の宅地建物取引業者の場合には、本店所在地を管轄する都道府県庁または管轄地域の国土交通省地方整備局(建政部建設産業課など)のどちらでも閲覧をすることができます。

ただし、国土交通省地方整備局は宅地建物取引業者名簿などの閲覧に関して、あまり積極的ではないようです。全国の地方整備局のうち、ホームページで閲覧の案内が容易にみつかるのはごく一部にとどまり、大半は探すのに苦労するか、見つけることのできない状態です。それ以前に「国土交通省へ行って閲覧をする」という消費者の需要自体が少ないのかもしれませんが……。

なお、それぞれの都道府県庁または国土交通省地方整備局によって閲覧できる時間帯や曜日が異なりますので、実際に閲覧へ行く場合には事前に確認をしておくことが必要です。また、閲覧については有料の場合(たとえば東京都は1件につき300円、大阪府は無料)もあります。


閲覧で分かること、分からないこと

宅地建物取引業者名簿などの閲覧といっても、「一覧名簿」のような形式ではなく、それぞれの宅地建物取引業者ごとに免許申請書およびその添付書類、変更届出書などがファイルされたものをみることができます。

これにより、宅地建物取引業者の基本情報(商号、所在地、免許証の有効期間など)のほか、代表者や役員、専任の宅地建物取引士などの氏名や略歴も分かります。

頻繁に商号が変更されていたり、短期間のうちに代表者や役員が何度も入れ替わっていたりするような宅地建物取引業者には十分に注意しなければなりません。

免許を更新した宅地建物取引業者であれば、申請前5年間の取引実績(取扱件数、仲介手数料収入、売買の取引金額)も分かります。

過去5年間(東京都の場合)に行政処分を受けたことのある宅地建物取引業者のファイルには、その記録を示す書類が一緒に綴じられています。ただし、これは正式な行政処分を受けた場合だけで、処分に至る前の行政指導や注意は、その事実があったとしても記載されていません。

また、その宅地建物取引業者に対する消費者からの苦情やトラブル相談が多くても、そのような情報は分かりませんから、名簿などの閲覧をしただけで宅地建物取引業者の良し悪しを判断することはできないでしょう。

なお、役所(あるいは担当者)によっては名簿などの閲覧とは別の「事前相談」によって、これから取引をしようとする宅地建物取引業者の情報をある程度まで教えてくれたり、注意喚起をしてくれる場合もあるようです。

そのような対応をしてくれる役所であれば「名簿などの閲覧」よりも、むしろ「事前相談」を積極的に活用して情報を得るようにしたいものです。それとは逆に、規定外のことはまったく教えてくれない役所もあるようですが……。


基本情報はインターネットでも

宅地建物取引業者の基本情報(商号、所在地、代表者氏名、免許証番号、免許証の有効期間、行政処分歴など)については、国土交通省サイト内の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」や、一部の自治体のWEBサイトでも調べられるようになっています。

東京都では「宅地建物取引業者の免許情報提供サービス」が2003年(平成15年)3月から稼働しています。他の自治体でもインターネットによる情報提供が増えていくことでしょう。

これから取引をしようとする不動産業者が無免許業者だった(宅地建物取引業者ではなかった)というケースに遭遇することは滅多にないでしょうが、インターネットで調べられることについては、事前にチェックしておくようにしたいものです。


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