不動産売買の法律・制度/宅地建物取引業法詳説

宅地建物取引業法詳説 〔売買編〕 -15-

宅地建物取引業法のなかから「一般消費者も知っておいたほうがよいこと」などをピックアップして、順に詳しく解説するシリーズ。第15回は「媒介契約」および「代理契約」について。

執筆者:平野 雅之


宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第15回は、第34条の2(媒介契約)および第34条の3(代理契約)についてみていくことにしましょう。

 (媒介契約)
第34条の2  宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
   当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
   当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
   当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
   媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
   当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
   報酬に関する事項
   その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。
 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。
 前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第五十条の六に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。
 前項の宅地建物取引業者は、第五項の規定による登録に係る宅地又は建物の売買又は交換の契約が成立したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を当該登録に係る指定流通機構に通知しなければならない。
 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。
 第三項から第六項まで及び前項の規定に反する特約は、無効とする。
 
 (代理契約)
第34条の3  前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。

媒介契約は3種類

媒介契約を簡単にいえば「売買(または交換や貸借)契約の媒介(仲介)を宅地建物取引業者に依頼をする」という内容のものです。第34条の2の条文のなかには「媒介契約」と「専任媒介契約」という用語しか出てきませんが、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類が規定されています(専属専任媒介契約を特約付専任媒介契約とする分類もあります)。

そのいずれであっても、法律では「必要な事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付」となっていますが、実際には依頼者と宅地建物取引業者との間で媒介契約書を交わし、双方が記名(署名)押印をすることが通例です。

ちなみに、専属専任媒介契約は宅地建物取引業法の改正により平成2年5月6日から新たに導入されたものです。それぞれの媒介契約の違いやメリット・デメリット、どれを選ぶべきかなどについては、機会を改めて詳しく解説することにしましょう。

媒介契約書の約款(条文)は、それぞれの契約型式について国土交通省が「標準約款」を定めており、それに沿った内容のものであれば媒介契約書の右上隅に必ず「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約です」と記載されることになっています。

一方、標準約款によらない媒介契約書であれば「この媒介契約は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づく契約ではありません」と記載しなければならないため、わざわざ独自内容の媒介契約書を作成する宅地建物取引業者はありません。もっとも、意図的な改竄があれば話は別ですが…。

宅地建物取引業者が売主で、その媒介を他の宅地建物取引業者に依頼する場合などには、特殊な媒介契約書が使われることもありますが、一般消費者との間ではほぼ例外なく標準媒介契約約款に基づいた媒介契約書ですから、必要な記載項目が埋められていれば、あまり問題はありません。ただし、それぞれの条文についてはよく目を通して理解するように努め、分からないことは必ず営業担当者に聞くようにしてください。

価格への意見に根拠がなければ業法違反

不動産の売却を宅地建物取引業者に依頼して媒介契約を結ぶときには、その販売価格を決めなければなりませんが、その価額または評価額について宅地建物取引業者が意見を述べるときは「その根拠を明らかにしなければならない」と決められています。

つまり、営業担当者が何ら根拠を示さないまま「たぶん、○○万円で売れますからこれで売り出しましょう」などといえば、それは宅地建物取引業法違反です。通常は何らかの説得材料を用意しているはずですけどね。

指定流通機構への登録義務

専任媒介契約または専属専任媒介契約を結んだ宅地建物取引業者は、一定期間内にその物件を指定流通機構(REINS=レインズ)に登録しなければなりません。そして、登録後はその「登録を証する書面」(登録済証)を依頼者へ交付することになっています。

登録までの期間は、専任媒介契約が媒介契約締結の日から7日間(契約当日および業者の休業日を含まず)、専属専任媒介契約が5日間(同)となっています。なお、「媒介契約締結の日」とは依頼者との間で意思の合致があった日で、媒介契約書を交わした日(書面を交付した日)ではない旨が建設省(現、国土交通省)の通達により示されています。

つまり、たとえば依頼者と宅地建物取引業者との間で専属専任媒介契約を結ぶことに合意をしてから、実際に媒介契約書を交わしたのが5日後だったとすれば、その当日には登録が終わっていなければならないことになりますが、このあたりについては誤解をしている宅地建物取引業者が多いようにも感じられます。

また、一般媒介契約の場合には指定流通機構への登録義務がないものの、実際には一般媒介契約であっても登録をする宅地建物取引業者が比較的多いようです。

定期的な報告義務

宅地建物取引業者は媒介契約の依頼者に対して、専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を報告しなければなりません。この報告は、媒介契約書のなかに「文書または電子メール」のどちらかかが明記されることになっています。

業務処理状況が決められた期間内ごとに行なわれないとき、それは単に担当者の怠慢や「約束が守られない」という話にとどまらず、報告の遅れ自体が宅地建物取引業法違反となりますから、依頼をした売主はしっかりとチェックするようにしましょう。

買主の媒介契約書は?

本来であれば不動産の買主に対しても、宅地建物取引業者への購入の媒介依頼の内容を明らかにする書面として媒介契約書を交付するべきです。

ところが昭和57年に建設省が標準媒介契約約款を作成して以降、何度か内容の改正はあったものの、「買主向けの標準媒介契約約款」は作られないままで、長年にわたり放置され続けています。

国土交通省による現行の媒介契約書のひな型にも購入希望物件について記入する欄は設けられていますが、約款の内容自体が売主向けのもので、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」という分類や、法律の規定も買主にはそぐわないものです。「専属専任媒介契約」によって買主の選択行動を束縛するわけにもいきませんからね。

そのため、実際には購入物件が確定してから、あるいは売買契約が終わってから、(手順としては原則と逆になりますが)形式的に買主との間で「一般媒介契約書」などを交わす宅地建物取引業者が多いようです。この場合、媒介手数料の支払約定書の意味合いを含んでいることも多いでしょう。

国土交通省に対しては、買主の行動を過度に拘束しない範囲内で「買主に向けた媒介規定の整備」や「購入者専用の標準媒介契約約款」の作成を望みたいところです。

ついでにいえば、第34条の3において「前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する」というのも、たいへん曖昧さを含んでいて実態と乖離している面があります。代理契約に関する規定の整備もしっかりと行なって欲しいものです。

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