世界遺産/アメリカの世界遺産

イースター島 ラパ・ヌイ国立公園/チリ(3ページ目)

隣の陸地から約420km、人が住む島からは2,000kmも隔絶された孤島イースター。ところがこんな孤島に、最大で200tものモアイが900体以上も打ち捨てられていた。西洋に発見されたときにはすでに文明が消滅していたというミステリーと、美しい火口湖&モアイを見る旅を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

モアイからのメッセージ その2 人と自然と

アフ・コテリクのモアイ。このモアイに入っている目は近年つけられたものだが、かつてはすべてのモアイに目が入っていたらしい ©牧哲雄

アフ・コテリクのモアイ。このモアイに入っている目は近年つけられたものだが、かつてはすべてのモアイに目が入っていたらしい ©牧哲雄

鳥人の彫刻や食人の跡を残す人骨が発掘された洞窟アナ・カイ・タンガタ ©牧哲雄

鳥人の彫刻や食人の跡を残す人骨が発掘された洞窟アナ・カイ・タンガタ ©牧哲雄

バンガロアの街外れ、断崖の中にアナ・カイ・タンガタがある。訳すと食人洞窟。ここで、鈍器でつぶされた原住民の遺骨が発見された。イースター島はモアイを900体以上も造るほど栄えたが、やがて人口は2万に達し、ヤシやバナナは食べ尽くされた。島はふたつの勢力に二分され、モアイを倒し合う大戦争を経て、人を食べるまでに飢えたといわれている。

このとき、モアイについていた目もくり抜かれた。モアイは「マナ」を発するため、目を取ることで敵の力を封じようとした。マナに抱かれた人々は、やがてマナを支配しようとした。

クックが去った後、植民地支配は激化して、イースター島も奴隷貿易の犠牲になった。数千の島民が奴隷として運び去られ、一時は絶滅の危機さえあった。その後もチリに支配され、弾圧を受けた。それでも人は生きてきた。

 

自然のドラマ、人間のドラマ、あらゆるドラマがこの島には、ある。でも、自然もモアイも、おじいさんが昔話を語るように、とてものんびりと語りかけてくれる。そこがやっぱりポリネシア。

モアイ倒し戦争の際に倒されたと見られるアフ・バイフのモアイ群 ©牧哲雄

モアイ倒し戦争の際に倒されたと見られるアフ・バイフのモアイ群 ©牧哲雄

馬に乗って羊を追う現地の男と話をした。
モアイって何だ?
知らない。
鳥人は?
知らない。
観光の仕事はしないのか?
興味ない。
なぜ生きるんだ?
家族のためだ。

モ・アイ。モは未来、アイは生きるを意味する。

※食人が実際あったのか明らかではない。また、あったとしても飢えのせいなのか、宗教的意図があったのか、理由は不明。また、モアイもいったいなんなのか、どうやって造られ運ばれたのか、いまだ謎に包まれている。
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