防犯/子どもを犯罪から守る

万引きをさせないしつけと教育

万引き犯罪の事件は連日のように報道されています。やってはいけないことだと分かっているはずなのになくならないのはなぜなのでしょうか? 社会生活で守るべきルールを教えるのは――。

佐伯 幸子

執筆者:佐伯 幸子

防犯ガイド

万引きの認知件数

警察庁:平成21年上半期犯罪情勢(クリックで大きな別ウインドウで見られます)

警察庁:平成21年上半期犯罪情勢(クリックで大きな別ウインドウで見られます)

警察庁発表の平成21年上半期における全国の「万引きの認知・検挙件数」を見てもわかるように、昨年上半期の全国認知件数から一日平均認知件数を算出すると、約420件です。あくまでも警察が認知した件数であり、実際の発生件数ではありません。万引き被害に遭っても警察に届け出ず、店で内々に処理してしまったり、被害に遭ったことすら店が気づいていない場合も合わせると、総数はいったいどれだけの数になることか、数十倍あるいは数百倍とも言われていますが、実際の件数は計り知れません。

万引きは「窃盗」という罪

万引きは明らかな犯罪です。刑法でも以下のように定められています。

刑法 第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。

これには、金額がいくら、ということは記載がありません。つまり、物の値段が1円であろうと100万円であろうと、盗みをしたら10年以下の懲役か50万円以下の罰金の刑を受けることになるのです。もちろん、実際には事件ごとに情状を検討して決められることになりますが、万引きはすなわち窃盗罪であり、これだけの罰を受ける犯罪なのだということです。

子どもが万引きをして捕まった場合は、補導という形になりますが、未成年者の場合には必ず親などの保護者が呼び出されます。そこで親などがどういう反応を示すかというと、実に千差万別です。「代金を支払えばいいのだろう」「たかがこれくらいで」といったように、罪と思わず、まるで捕まえたほうが悪いかのような言い方をする人も少なくないといいます。

もちろん、子どもがいる親や、子どもを教育する立場の学校の先生たちも度々万引きで捕まっています。ただし、まれに病気による万引きというケースもあり、あるいは、親にかまってもらいたいがために万引きを行う子どももいるなど、万引きすべてを単純に罪と断じることはできないという事情もあります。しかし、単純に万引き=窃盗の罪を犯すような場合、「欲しかったから」「お金を出すのがもったいないから」というような理由とは言えない理由で万引きをすることは許されません。

商品の背景を知って教え諭す

親子でしっかり話し合い

親子でしっかり話し合い

子どものうちから、「人の物を盗んではいけない」という教育やしつけがなされているか、が問題です。「うちの子は万引きなんかしないはず」と勝手に思い込んでいるだけで、きちんと親子で話し合ったことがあるかどうかがポイントです。また、親であれば、「わが子が万引きで捕まったとしたら、自分はどう対応するだろうか?」と一度でも考えてみるべきです。

「お金を払えばいいんでしょう」と思わず言ってしまわないか、「うちの子だけじゃないでしょう」などと、事実を認めたがらない反応をしてしまわないか、親自身が自分に問うことが大切なのです。そして、品物が店頭に並ぶまでにどれだけ多くの人の手がかかっているか、原材料、生産、輸送、あらゆる人件費など、とてつもない人数の手間と彼らの生活費までが1個の商品の背景にあるのだということを、おとなも子どもも理解する必要があります。

そうした会話をすることによって、万引きをすることは罪であり、恥ずべきことであり、やってはいけないことだと認識できていくものでしょう。なぜいけないことなのか、自分はどう思うのか、どう子どもに伝えていくかをしっかり考えること。しつけや教育は一方的にではなく、教える側も自問自答しながら考えていく機会になるものです。わが子が万引きで捕まったときにしつけや教育が足りなかったと後悔する前に、しっかりと教え諭しておくことが望ましいでしょう。
 

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