地上最大の謎 ナスカとフマナ平原の地上絵

均整のとれた美しい姿で魅せる全長120mの「コンドル」。他の地上絵も同じだが、名前は推測で、本当にこの絵がコンドルかどうかはわからない ©牧哲雄

均整のとれた美しい姿で魅せる全長120mの「コンドル」。他の地上絵も同じだが、名前は推測で、本当にこの絵がコンドルかどうかはわからない ©牧哲雄

1939年6月22日、ナスカ川とインヘニオ川の間に位置するナスカ台地を飛行機で飛んでいた考古学者ポール・コソックは、地上を眺めて驚いた。一説によると人間や動植物の絵は70以上、幾何学図形は700、直線に至っては数千から1万を超えるともいわれる巨大な地上絵が、目の前に展開していた。

今回は謎に包まれたペルーの世界遺産「ナスカとフマナ平原の地上絵」に迫ってみよう。

展望台からでも見えない巨大な地上絵

ミラドールと「木」。左上が根で、右下に枝を広げている。右下がミラドール。ミラドールは考古学者マリア・ライへが地上絵を保護するために建てた塔 ©牧哲雄

ミラドールと「木」。左上が根で、右下に枝を広げている。右下がミラドール。ミラドールは考古学者マリア・ライへが地上絵を保護するために建てた塔 ©牧哲雄

ミラドール ©牧哲雄

高さ20mのミラドール ©牧哲雄

ナスカのミラドールにのぼる。ミラドールとは、ナスカ台地を横切って走っているパン・アメリカン・ハイウェイの横にチョコンと立っている展望台だ。ここから見える地上絵は「木」と「手」と「トカゲ」。特に枝を大きく広げ、生命力にあふれる「木」は地上絵のハイライトのひとつだ。

しかしミラドールからだと、「木」の全体が見えるには見えるのだが、絵が大きいのでかなり斜めからの眺めになってしまう。はじめから「木」といわれなければ何がなんだかわからない。全体像をしっかり見たければ、やはり空から眺めるしかない。地上絵は20mの高さから見ても気をつけなければわからない。それほどに、大きい。

地上絵が描かれたのを紀元500年とすると、ポール・コソックが発見するまで約1,500年間も地上絵が忘れ去られていたことになる。それはそうだろう。ナスカのパンパ(平原)を歩いても、線にあたる部分は表面の砂が削られて、下の白い砂がちょっと出てしまった程度にしか見えない。数百メートル規模の絵が描かれているなんて、想像できるはずもない。

 

わかりにくいが、ミラドールから見た手。左から右に向かって2本の手が広がっているが、なぜか指は4本しかない ©牧哲雄

わかりにくいが、ミラドールから見た手。左から右に向かって2本の手が広がっているが、なぜか指は4本しかない ©牧哲雄

しかも動植物の絵で最大規模を誇る「鳥」は全長約280m、幾何学図形で最大のものは人工衛星ランドサットの衛星写真ではじめて確認された矢印で、なんと全長50kmに及ぶ。

だからナスカ文化以降の人類は地上絵を忘れ、そんなものがあるとも知らずに道路を建設し、地上絵のドまん中に道路を通してしまった。ミラドールから見える「トカゲ」は、体のまん中をパン・アメリカン・ハイウェイにつぶされて、ほとんど消えている。