チェスキー・クルムロフで、中世のままに空気を感じよう
雪化粧をまとったチェスキー・クルムロフの冬景色。パステルカラーの街並みに雪の白がよく映える ©牧哲雄
チェスキー・クルムロフの魅力は何か? そう聞かれたらこう答えたい。空気。旧市街はそのままルネサンス様式の小さな街。ルネサンスにタイムスリップして、そのままルネサンスを感じたい。
空気を感じる方法はひとつ、街歩きだ。街歩きのコツをお教えしよう。ガイドブックは読まずにバッグにしまい込んでレッツらゴー。名所を点と点で結んで見たって、それじゃ博物館で展示物を見ているのと変わりない。街は生きているし、人も生きている。ブーケのようなこの街を、蜂のようにふらふらと飛び回ってみよう。
バス停近くにあるブディヨビッツ門。ここから街に入る ©牧哲雄
たとえば壁。薄いピンクや黄色の壁に斜めに陽光が射す。ピンクに出窓の長い影が格子を描き、この色と形が刻一刻と変化する。それから形。家々が曲線を描いて並ぶ通りのようす、川が曲がりくねって街を囲むその雰囲気。あるいは人。昼間っから鼻の赤いおっちゃんがビールを飲んでいる。どうしてかって? 何かに気づいたときが、調べるとき。そんなとき、はじめてガイドブックを取り出してみればいい。
ブルタヴァ川がやさしく流れる。ここで川下りもできる ©牧哲雄
チェコはビールの本場。チェスキーは「チェコ」の意味。チェスキー・クルムロフの隣町はチェスキー・ブディヨビッツ。「ブディヨビッツ」をドイツでは「ブドヴァイゼル」と読む。これを英語発音にすると「バドワイザー」。そうなんですね、バドワイザーはここから名前をとったとか。この辺りはビールの本場なのだ。もっとも味は全然違う。コク、甘み、クリーミーさ、断然こちらの地ビールが上。
チェスキー・クルムロフの歩き方
チェスキー・クルムロフ歴史地区の夕景。夜もまた美しい
この街は適当に歩いていれば必ず見所に出合える。街のどこからでも見えるのがチェスキー・クルムロフ城だ。ピンクと緑に彩られた塔が街を見下ろしている。きっとあそこに昇ったら気持ちいいだろうなー。OK、そうしよう。
この街の第一の観光地はやはりこの城。フラデークの塔と、城と庭園をつなぐプラスティー橋が街を眺める二大スポットだ。この2か所を見たら、城内を適当に見てまわろう。ゴシックやら何やら、様々な建築様式や宮殿のインテリアを楽しむことができる。
チェスキー・クルムロフ旧市街のカラフルでかわいらしい屋根屋根
城から街を見下ろすと、ひときわ目立つのが教会だ。OK。行ってみよう……というように、気づいた場所をふらふらしてみるといい。それが街歩き。チェスキー・クルムロフの街は小さい。ただ歩くだけなら数時間で回れるし、迷ったって川か橋か山に突き当たる。自由気ままに、妖精のようにすごしてほしい。なんせここは眠れる森の美女の、おとぎの国なのだから。