世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

おとぎの国の世界遺産チェスキー・クルムロフ/チェコ(3ページ目)

ボヘミアの深い緑に包まれたパステルカラーの街並みはまさに「おとぎの国」。中世の雰囲気を伝えるかわいらしい街並みは、その美しさから「眠れる森の美女」と評されたという。今回は中欧でもっとも美しいと言われる古都のひとつ、世界遺産「チェスキー・クルムロフ歴史地区」の観光情報から歴史・文化まで、その見所を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

チェスキー・クルムロフで、中世のままに空気を感じよう

チェスキー・クルムロフの冬景色

雪化粧をまとったチェスキー・クルムロフの冬景色。パステルカラーの街並みに雪の白がよく映える ©牧哲雄

チェスキー・クルムロフの魅力は何か? そう聞かれたらこう答えたい。空気。旧市街はそのままルネサンス様式の小さな街。ルネサンスにタイムスリップして、そのままルネサンスを感じたい。

空気を感じる方法はひとつ、街歩きだ。街歩きのコツをお教えしよう。ガイドブックは読まずにバッグにしまい込んでレッツらゴー。名所を点と点で結んで見たって、それじゃ博物館で展示物を見ているのと変わりない。街は生きているし、人も生きている。ブーケのようなこの街を、蜂のようにふらふらと飛び回ってみよう。 
ブディヨビッツ門

バス停近くにあるブディヨビッツ門。ここから街に入る ©牧哲雄

たとえば壁。薄いピンクや黄色の壁に斜めに陽光が射す。ピンクに出窓の長い影が格子を描き、この色と形が刻一刻と変化する。それから形。家々が曲線を描いて並ぶ通りのようす、川が曲がりくねって街を囲むその雰囲気。あるいは人。昼間っから鼻の赤いおっちゃんがビールを飲んでいる。どうしてかって? 何かに気づいたときが、調べるとき。そんなとき、はじめてガイドブックを取り出してみればいい。
ブルタヴァ川の流れ

ブルタヴァ川がやさしく流れる。ここで川下りもできる ©牧哲雄

チェコはビールの本場。チェスキーは「チェコ」の意味。チェスキー・クルムロフの隣町はチェスキー・ブディヨビッツ。「ブディヨビッツ」をドイツでは「ブドヴァイゼル」と読む。これを英語発音にすると「バドワイザー」。そうなんですね、バドワイザーはここから名前をとったとか。この辺りはビールの本場なのだ。もっとも味は全然違う。コク、甘み、クリーミーさ、断然こちらの地ビールが上。 

チェスキー・クルムロフの歩き方

チェスキー・クルムロフ歴史地区の夕景

チェスキー・クルムロフ歴史地区の夕景。夜もまた美しい

この街は適当に歩いていれば必ず見所に出合える。街のどこからでも見えるのがチェスキー・クルムロフ城だ。ピンクと緑に彩られた塔が街を見下ろしている。きっとあそこに昇ったら気持ちいいだろうなー。OK、そうしよう。

この街の第一の観光地はやはりこの城。フラデークの塔と、城と庭園をつなぐプラスティー橋が街を眺める二大スポットだ。この2か所を見たら、城内を適当に見てまわろう。ゴシックやら何やら、様々な建築様式や宮殿のインテリアを楽しむことができる。
チェスキー・クルムロフ旧市街の屋根屋根

チェスキー・クルムロフ旧市街のカラフルでかわいらしい屋根屋根

城から街を見下ろすと、ひときわ目立つのが教会だ。OK。行ってみよう……というように、気づいた場所をふらふらしてみるといい。それが街歩き。チェスキー・クルムロフの街は小さい。ただ歩くだけなら数時間で回れるし、迷ったって川か橋か山に突き当たる。自由気ままに、妖精のようにすごしてほしい。なんせここは眠れる森の美女の、おとぎの国なのだから。 
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