世界遺産「チェスキー・クルムロフ歴史地区」
ヨーロッパでもっとも美しいといわれる街のひとつ、チェスキー・クルムロフ旧市街。右上に見えるのがチェスキー・クルムロフ城
チェスキー・クルムロフはボヘミアの深い森に守られて、中世から姿を変えることなくいまに伝わった。その街並みはまるで花束。ボヘミアの深緑の中、ブルタヴァ川は「Ω」型に輝いて、屋根のオレンジ、壁の白、ピンク、黄、青が咲いている。人々はあまりの美しさに、この街を「眠れる森の美女」と呼んだという。今回はそんなチェコの世界遺産「チェスキー・クルムロフ歴史地区」を紹介する。
森との戦い
チェスキー・クルムロフ城から見た旧市街。中央上に見えるのが聖ヴィート教会。チェスキー・クルムロフ城は、チェコではプラハ城に次ぐ大きさを誇る
キリスト教は信仰を広めるなかで、多神教の神々や妖精たちを悪魔として追放しようとした。『グリム童話』、たとえば「ヘンゼルとグレーテル」や「赤ずきん」に見られるように、森は魑魅魍魎が住み着く暗黒の世界に姿を変えた。鉄器によって農業や林業技術が飛躍的に上昇した11世紀以降、大開墾時代がはじまった。
ブルタヴァ川とチェスキー・クルムロフ城。ブルタヴァ川はドイツ語でモルダウ川