印象的な箔押しラベル
暗いところでも目立つ文字。これを真似する蔵もある。 |
「あれは箔押しなんですが、お酒の取り扱いに気を使うお店は、たいてい冷暗所とか冷蔵庫のようなところにお酒を置いてくれるんです。だから、そういう場所にあって、いかに目立たせるかってことを考えたら、あれになったんですよ」と。今おもに流通しているのは4、5種類だが、最初に作った緑バージョンは思い入れが強いと語る。
ビカッと光って目立つけれど、決していやらしくなく、逆に品よく見えるのは色のセレクトのせいだろうか……。文字のデザインのせいだろうか……。このあたりも十四代人気をになう顕統氏ならではの感性なのだろう。
「伊勢丹で働いていたころはちょうど淡麗辛口ブーム・新潟酒ブームのころ。あのブームを経て杜氏さんと入れ替わりに蔵に戻ったわけですが、一年早かったら淡麗辛口に巻き込まれていただろうし、一年遅くても今の味は造れなかったでしょうね。十四代の味が生まれたのは、ほんと、タイミングが良かったからなんです」とかざらずに語ってくれる表情には、苦労しながらも十四代を日本酒の代表銘柄に仕立て上げた自信が垣間見えるようだ。
お酒造りは自然界の曼荼羅
今の人気の裏には「秘伝玉返し」や「七垂二十貫」の優れた技術があったからこそ。 |
昔から酒蔵が村の神社を造り、お神酒をささげ、そこにまた米が集まった。この流れはまさに自然の輪廻。この流れが狂い始めていることに不安を感じると氏。
また、尺貫法がメートル法に変わってしまった(昭和34年)ことも実は問題とおっしゃる。酒造りは何百年ものあいだ、蔵独特の数字や言葉を使って仕事をしてきた。酒屋にとって数字は大切。それを無理にかえられたので、職人はついていけずやめてしまった。つまり酒文化を失ってしまったことに通じる。残念なことだとうつむく。
酒造りと政治をあわせて行ってきた辰五郎氏らしい見解である。
さて、今回はここまで。「続報!山形『十四代』蔵元、高木酒造を訪ねる」は、気になる高木酒造の酒蔵見学レポートを掲載!蔵での酒造り全体を取り仕切る顕統氏の案内のもと、お蔵の中を拝見しよう。