よく「水が合う」と言ったりするが、最近これをつとに実感している。
先日参加した「フロンティア東条21/極上山田錦のお酒と料理を楽しむ会」でもそうであった。この「フロンティア東条21」は、兵庫県加東郡「東条町」産の最上級山田錦を使った日本酒造りに力を注ぐ団体で、参加蔵には、義侠、大英勇、醴泉、根知男山、初亀、磯自慢、美丈夫、松の司、明鏡止水など人気・実力ともにかねそなえた蔵が名を連ねている。実際この夜も一口飲むごとに一声唸るものがずらり揃っていた。
しかし、ああ、心底美味しい、身体に合うなと感じたのは、加盟蔵のなかの黒龍であった。山田錦らしい骨格は持っているが、なによりやさしくて柔らかいのだ。飲めば飲むほど体の細胞にしみわたる~という感じ。そう、黒龍は私と生まれが同じ福井県のお酒なのだ。米は兵庫かもしれないが水は懐かしい我がふるさとの水である。飲みやすい、身体に合うと無意識に感じたのはそのせいであっただろう。
「浦底」は地元でしか買えない。 カラフルさが目を引く。 |
米や造りの技術はかえられても水はかえられないからなぁ・・・。
ここ数年日本酒通の間で注目株の「早瀬浦」を飲んでもそう感じる。福井は若狭の蔵だが、芯はしっかりしているけれど、どこか繊細さのあるやさしい味わいなのだ。
福井の知人から「地元でしか手に入らない」と紹介された『早瀬浦 純米滓酒 “浦底”』も、これまた流行りの純米・無濾過・生・原酒・おりがらみ・・・ではある(たいていしっかり骨太の強い味わいになることが多い)が、やはりどこかみずみずしさとやさしさを持っている。やはり、ああ、身体に合うなと思わせる。
「浦底」とは蔵のある湾の名前であり、タンクの底から取った酒であることをかけて付けられたらしい。火入れなしの出来たてなので開栓時には吹き零れないよう注意が必要だ。
紺碧色のボトルに白く淡く滓が舞い、ラベルには若狭の鯛が跳ねるこの一升瓶のスタイリングはハッとするものがある。ラベルだけほしいと言う人もいるのだとか。三宅彦右衛門酒造さんはお酒造りだけではなく、センスもいいのだなとお見受けする。
誰にでもある「水の合う」お酒。さて、あなたはどこの水が合いますか?
■三宅彦右衛門酒造(有) 0770-32-0303
福井県三方郡美浜町早瀬21-7