沖縄本島から、奄美大島、種子島など島々を経由して、鹿児島の西郷隆盛像の目の前まで、1本の国道が走っているのをご存知だろうか?海の上にだって通っている。
実際、船上から海の上に「ROUT58」と書いてあるのを見てきた(←ウソ)。
いやいや、島々と海を結ぶ、全長750kmの「国道58号線」が認定されているのは本当で、この“海道”は、まさに焼酎の伝播ルートそのものであり、日本の焼酎文化のルーツを探る絶好の蒸留酒ラインといえる道なのである。
この“焼酎海道”を陸路と海路で縦断してきた。
そこで出会った焼酎の造り手さんたちとお酒を全3編に分け紹介していこう。
まずは、沖縄本島「琉球泡盛」から。
■■自社南蛮甕工場を持つ『忠孝酒造』■■
「忠孝酒造」玄関 |
11月初旬の沖縄はまだ暑い。
パワー全快の太陽の下、じわっと汗をかきながら、「国道58号線」“焼酎海道の旅”のスタートになる豊見城(とみぐすく)市へ向かう。マフラーなど持ってこなけりゃよかったと大後悔。
さて、まずお訪ねしたのは『忠孝酒造』。
創業昭和24年。比較的大きな造り手さんで、まろやかで品のある味わいの泡盛で知られているが、なんといっても注目すべきは、自社で南蛮甕を造っているところ。
現社長大城勤氏。笑顔が優しい |
実際見せていただいた陶器工場は酒造場より大きくてビックリ…。
しかし、こうもおっしゃる。
「陶芸をする理由は、やはり、泡盛というのは甕で育つもの、という思いがあるからです。
温故知新という言葉がありますが、われわれは〔知新温故〕というふうにも考えていて、新しいことを知ると、昔のいいものがわかるのです。陶芸を体験して、あらためて泡盛のよさ、甕熟成のよさがわかったともいえます。」
<蒸留釜。常圧発酵で原料の風味を残す。=左><黒麹菌で発酵させる泡盛。クエン酸が豊富な黒麹を使うことによって、温暖な気候ゆえに雑菌が繁殖しやすい沖縄でも、健全な酒造りができるのだ。=右> |
温かみのある風合いの自社製南蛮甕は、見ているだけでほっと心が休まる感じがするし、甕の触媒効果が泡盛をまろやかにするといわれている。ミニサイズのものもあるので、おみやげにもおすすめできそうだ。
素焼きの甕入り。各種あり小ぶりなサイズもある |