さあ、夜はお待ちかねの『セイコガニ』だ。この『セイコ』は『背子』とも書き、越前ガニのメスをいう。オスは『ズワイ』と呼ばれ大ぶりで艶があって高級カニとして知られているが、私が押したいのは絶対『セイコ』。地域によっては『松葉』『コウバコ』などと呼ばれているが、おらが故郷の贔屓目で、越前海岸沖の漁場でとれたものがいいように思う。
さて、面倒だけど一番美味しいのは包丁を入れないで、手でむきながらバリバリ食べること。まず、おなかからあふれんばかりに入っている赤いツブツブの子を、お腹の薄い殻とともにパキッとはずす。ツブツブは赤黒い方が熟女で旨みがあって美味しいらしい。
次に左右の足を甲羅から静かにはずす。すると甲羅にたっぷりつまった、ほっくりとした赤いみそ、濃厚な白いみそ、旨みたっぷりの青いみそが、じゃじゃ～んと登場する。ううっ、たまらん。これが、う、うまいのじゃ～。
 奥の皿の手前にあるのがツブツブの子。絶品! |
しかしここで慌ててはいけない。甲羅のうえにある目というか口というか、そのあたりをバキッと内側に押し込むと、ぽろりとその部分が取れて、そこにもたっぷりの赤白青のみそが隠れておるのだ。最初に口に含むのはこの部分。ホクホクこっくり甘くてうまくてなめらかで、ああ、幸せってこういうことを言うのね～という感じ。
さあ、もう止まらない。甲羅の内側のみそを手でつまみながらゆっくり味わう。お酒は福井の地酒『一本義 伝心』のヌル燗。カニみその濃厚な旨みを選り引き立ててくれる。べとつく手でもかまってはいられない。
みそを半分ほど堪能したら、腹についていた赤いツブツブを少しづつハグハグする。細い枝のようなものに沢山のツブツブがくっついているので歯でハグハグしてこそげとるのだ。旨みと歯ざわりが独特で他のカニでは味わえない珍味中の珍味。このツブツブの塩味を『伝心』で洗い流しつつ、お待ちかねの身にゆっくりと移る。
■あぁ、手が止まらないっ。この世の幸せ。。■
まずはもっとも太い足を体からしずかにもぎ取り、もぎ取った付け根の部分をちょびっとかじり取る。おおっと、ガシガシ歯でしごいてはいけない。落ち着いて、第二関節以下の細いところを太い方へぐいぐいっと押し込んでいくのだ。そう、取らないでそのまま押し込むのです。するとかじり取ったところからアラ不思議、身がつつつつーっと出てくるではありませんか。つやつやの身・・・。ウフフフ。それを、パクーッと一気にほおばる。繊細でなめらかな身の甘さが口中にジュワ～～～ッ。幸せ。。。
え？ カニ酢はって？ なんですと～！ そのようなものは一切必要なし。カニの旨みを率直に純粋に真摯に味わうのが正しい食べ方です。ま、慣れないとちょっと難しいけどね・・・。
細い足はキシキシ歯でしごいてもＯＫ。爪のあたりも身が詰まっているからお見逃しなく。さ。もう一度甲羅につまっているみそを根こそぎすくってしまおう。もしくは、身に絡めてもいい。
⇒まだまだがっつり味わう。お楽しみはこれからだ！
