いま私は、ワインコーディネーター兼ソムリエという仕事をしているが、日本で働くソムリエならばワインだけではなく、日本のお酒はもちろんのこと、ビールやカクテル、中国酒と幅広く接していきたいという思いを常に持っている(単なるお酒好きという意味合いもかなりある)。そんな人間にとってこのレモンハートは、漫画ゆえにわかりやすくて、それでいて深い情報を提供してくれる、ありがたい教材といえる。
そのレモンハートがワイン特集号を出すことになり、作者の古谷三敏先生と対談させていただけることになった。我がワインバーにいらした先生は、漫画の雰囲気そのままの気さくな風情で、お話も楽しく、おすすめ銘柄もいろいろでてくる。
ま、その様子は特集号発売後にご確認いただくとして、今回書きたいのは、その対談終了後に、先生の口からポロリと出た日本酒のことだ。
「今気に入ってるのがあるんだよ。常の山と書いてじょうざんと読む。福井のお酒。福井の駅からすぐ近くの蔵だよ」
むむむ、私が福井出身と知っての狼藉・・・いや、おすすめか? そのうえ、対談日の翌日から偶然にも帰郷する私の予定すら入手しているかの発言・・・。
さては、漫画家という皮をかぶった隠密ではあるまいか・・・。・・・と、クリエーターの方と話をしていると、どうしても想像力豊かになってしまうのだが、実際、この
『常山』を漫画に載せたことがあり、そのあと蔵への問い合わせが殺到したのだとおっしゃる。
早速福井へ帰って、同級生が経営するバーで『常山 吟醸』と『常山 純米吟醸 無濾過生』を用意してもらった。ボトルにある蔵の住所を見ると確かに駅近か。おまけに我らが高校の超ご近所だった。あんなところに酒蔵があったのネ・・・。
味わいは、福井の酒らしい柔らかくて繊細な口あたりに、フレッシュさと切れのよさをプラスした感じ。とくに無濾過生はカシューナッツのような香ばしい旨みと清らかな酸味がバランスよく、飽きることなく次から次へと杯がすすんでしまう。
文化元年(1804年)創業の歴史ある蔵が、現社長就任にともない現在のブランドに変更されたとか。印象的な「ヘタウマ風」というか「みつお風」のデザイン文字のラベルも、そのときに一新されたものかもしれない。
思わぬところで知った地元のお酒。灯台下暗しとはまさにこんなことなのだなあ。あなたの周り、あらためて見回してみてはいかがです?思わぬ掘り出し情報があるかもしれませんよ。
●常山酒造合資会社 0776-22-1541
常山 純米吟醸 無濾過生 3,100円