行ってきました、我が故郷福井。
東京から1週間遅れで満開、北陸 福井市内の桜並木を見ながら、まずは、鯖江市の加藤吉平商店『梵』(ぼん)の酒蔵を訪ねました。
両替商だった先祖が日本酒製造にうつり現在11代目の加藤団秀(あつひで)氏に、蔵の中を案内していただきました。発酵途中のタンクの前で丁寧に説明してくれる加藤氏。
■梵の十一代目加藤団秀氏(左)と杜氏の多田貴美男氏
「これはちょうど24日目。香りをかいでみてください。うちは、ご覧のとおり独自の設計で作った開放桶です。中で対流が起こりやすくなっています。密閉のタンクは、掃除が出来ないのと、何より、発酵の状態を、目と耳で確かめることが出来ませんからね」
なるほど、そうか。で、香りをかぐと、うわ~っ、華やかな果実香。まるで梨みたいだ。
ほかにも細心の注意を払っている。
「微妙な調整が出来る米洗い機を開発しましたし、普通、酒母タンクからはポンプ
で酒母を発酵タンクに移すのですが、米がつぶれてしまうのです。
それを防ぐために、わざわざ、酒母タンクをリフトに乗せて、上まで持ち上げて
手で入れてます」
ふんふん、酒作りって、本当に微妙で繊細なのね。
「ハイ、子供のようなもので、誉めたりしかったりしながら育てるんですよ」
と加藤氏。納得です。
■発酵中のタンクで酸素量を量る。ほとんど二酸化炭素のタンクの掃除は危険が伴う
さて、試飲。『梵』の特徴は、何よりマイナス下で1年から5年の長期熟成してから、出荷すること。なにより飲み比べるとその理由がわかります。
今年出来た新酒は、華やかな香りだけど、口当たりがどこか刺すような、渋いような、辛いような、きついところがある。
「無濾過生原酒 限定 純米吟醸」の1年熟成を味わってみると、香りは控えめだけど、なんともなめらかで、とろみとまろみがあり、スムーズな印象。美味しい。
低温でじっくり熟成させると、さまざまな化学変化がじんわりと起こり、旨味が生まれるのです。もちろん、蔵で熟成された商品は予冷庫で梱包し、夕方配送するという気の配りよう。とすれば、お酒屋さんでの扱いが心配だなあ・・・。
「ハイ、ですから、信用おけるお酒屋さんとしか取引できないんですよ。それが蔵の姿勢です」と笑う加藤氏。
この二つのほかにも、先ほど、タンクから掬ってきた24日目のもろみをミキサーで砕いたものを、京都松尾大社でお払いを受けた杯でいただく。
梨の香りのするフレッシュで華やかな逸品で感動。
さらに、-15~18度で43年間熟成の純米大吟醸を試させていただいた。色は琥珀色で茶色い滓がたまっている。
味わいは、舌にぽってりと存在感があり、エキス分の凝縮した旨味と愕きのなめらかさ。そして不思議に、若々しさも同居しているみたい。これが低温熟成のなせる技なのかしら。
しかし、出来上がったお酒を数年間貯蔵するのは、当然すぐにお金にならないわけだから資本力が必要だし、何より場所がないといけない。
「ハイ、この土地3500坪すべてが蔵となってます」とこれまた笑う加藤氏。
これはシャンパーニュと同じだな・・・・。鯖江の名酒『梵』、一度お訪ねを。
さてそのあとは、あまりに人気で、看板も消し暖簾も閉まってしまうという、福井では超有名店の『吉野すし』へ少しつまみにいきます。
さすがにネタは新鮮で、ごはん粒が美味しい。
しかし、東京、銀座の寿司戦争の真っ只中にいる私の口には、シャリが大きめなのが気になったし、安くて評判だったはずなのに、二人で16,000円は福井価格としてはちょっとな~。ともかく人気店なので、お勧めだけど要予約です。
福井のうまいもの、うまい店は続く・・