セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

泣ける!映画『プレシャス』(3ページ目)

ゲイの監督リー・ダニエルズがアカデミー監督賞にノミネートされ、モニークが見事助演女優賞でオスカーに輝いた映画『プレシャス』。マスコミにも絶賛されている感動作のゲイ&レズビアン的な魅力をプッシュします。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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原作者はオープンリー・レズビアン


プレシャス
どん底にいたプレシャスを毅然と支えたレイン先生の強さと優しさに心を打たれます

ゲイだけでなく、レズビアンも、この映画のさりげなく重要なポイントになっています。
 
父親にレイプされてできた二番目の子を産み、母親に殺されそうになり、行き場を失ってたどりついた教師レインの家で、プレシャスは彼女の同居人の女性にも親切にしてもらいます。そして、二人が恋人どうしであることに気づくのです。プレシャスの独白(ナレーション)が入ります。「ママは同性愛は罪だと言ったけど、そうじゃない。彼女たちはレイプもしないし、勉強のじゃまもしない。あたたかく私を受け入れてくれたもの」。本当にいいシーンです。
 
プレシャス
『プレシャス』
サファイア:著/東江一紀:訳/河出文庫/798円
そして、この映画の原作『push』を書いた女性サファイアも、オープンリー・レズビアンです。
小説『push』は、彼女が実際にハーレムのフリースクールで子どもたちに読み書きを教えていた体験をもとに書いた作品で、世界的ベストセラーになりました。

この小説が日本語に訳され、映画に合わせて『プレシャス』というタイトルで、文庫版として刊行されました。
プレシャスとレイン先生との往復書簡という体裁をとっており、初めはたどたどしい言葉遣いだったプレシャスが、読み書きを学び、前向きに人生を切り開いていくにつれて、その言葉遣いも生き生きとしてくるという作品になっています。 
 
プレシャスがこのうえなく過酷な現実に直面し、打ちひしがれ、教室で泣きじゃくり、レイン先生やクラスメートが励ましますが、プレシャスは「もう疲れた…」と言って、日記に何も書けなくなります。そんなプレシャスに、レイン先生は、「書きなさい。ここで立ち止まるわけにはいかないのよ。ふんぱりなさい(push)」と言います。これが原題の『push』につながります。

映画を観て心を動かされた方、この原作小説もぜひ、読んでみてください。
 
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