セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイライフ

「日本のハーヴェイ・ミルク」へ愛をこめて(2ページ目)

映画『ミルク』が今、たくさんの人を涙させ、感動と共感を呼んでいます。いろんな意味で「愛」に生きたミルクは、30年の時を超えて今、僕らの「リアル」へとつながり、ちょっとした奇蹟も呼んでくれました。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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愛こそ力に~尾辻かな子事務所クロージング・セレモニー「希望のバトン」


ゲイカップル
尾辻さん、「希望」をありがとう!
2007年夏、レズビアン・カミングアウトして参院選に立候補し、TVなどでも盛んに報道され、多くの人たちに「希望」を与えた尾辻かな子さんは、まさに「日本のハーヴェイ・ミルク」です。その尾辻さんの新宿二丁目の事務所が、4月いっぱいでクローズしました。

撤収の前日、4月29日に尾辻かな子事務所クロージング・セレモニー「希望のバトン~『ミルク』で語るこれから。」というイベントが、blog「フツーに生きてるGAYの日常」のakaboshiさんによって主催されました。その模様を少し、お伝えしたいと思います。

最初にサプライズ・ゲストの伏見憲明さんがスピーチ(というより立派な講演でした)。二丁目初のゲイバーのマスターの証言を引用し、「あの時代から比べると今は隔世の感がある」というお話からスタートし、70年代にゲイリブを始めた大塚隆史さんが「母」なら、80年代~90年代にエイズのことやパレードや映画祭を始めた南定四郎さんが「父」だったと、ゲイムーブメントの歴史を総まくりしていき、レインボー祭りの開催や尾辻事務所ができたことの意義、尾辻選挙の惨敗の教訓、今後僕らはどういう運動を展開していくべきなのかということなど、壮大にして無駄のない、未来につながるような重要な言葉を語ってくださいました。(こちらでその原稿を読むことができます)

次に、映画『ミルク』、ドキュメンタリー『ハーヴェイ・ミルク』を観たあとにさらにもう1つ、ということで、ダン・ホワイトの人物像に迫るTV映画『破滅の銃弾』を鑑賞しました。新時代を象徴する存在で、上手にコミュニケーションして味方を増やしていき、政治家の資質にも恵まれていたミルクとは対照的に、ダン・ホワイトは、カタブツで思い込みが激しくて旧世代の価値観にすがって生きることしかできなかった、政治家の才能にも欠けていた男でした。彼が追い詰められていく心理、家族や周囲の人の反応などが、丁寧に描かれています。大塚さんが素晴らしく的確に、「彼は男を降りることができなかったのだ」と表現してくれました。

その後、1979年というリアルタイムな時期に人気ラジオ番組「スネークマンショー」でミルクのことやパレードのことなどを語っていた大塚隆史さん、福島光生さん(二丁目振興会会長)、尾辻かな子さんによるトークショーが開催され、ミルクについて、また、カミングアウトについて、今後のゲイムーブメントについて、語られました。大塚さんが「パートナーとの関係を築いていくことで、人は力を持つ、変わっていける」とおっしゃったのがとても印象的でした。8年つきあっているウチのダンナが昨年、思いがけず妹さん夫妻にカミングアウトしたことをしみじみ、思い出しました。そうした「愛」の気持ちこそが、同性婚を求めていくような「力」になるんだと思います。

最後に、尾辻さんからご挨拶。事務所のクローズは、政治家をやめるという意味ではなく、2007年の選挙のひとまずの区切りであり、いつかまた力を蓄えて再チャレンジしたい、と語ってくれました。お客さんたちが書いた寄せ書きと、大塚さんが「尾辻事務所のある二丁目の風景」を描いた素晴らしい絵画がプレゼントされ、尾辻さん、感涙…愛と感動のクロージング・セレモニーとなりました。
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