オトコが永遠に女性に求めるのはマザーシップ(母性)
マザーシップ(母性)はいつの時代にもどんな男性にとっても最も大切な女性性の象徴です。 |
雑誌「東京人」太宰特集(2008年12月発刊)の吉本隆明氏に対するインタビュー記事によれば、彼が、太宰の戯曲を芝居化するにあたり、打ち合わせに訪れた際、太宰から「おまえ、男の本質はなんだか知ってるか?」と尋ねられ、「わかりません」と答えると、太宰は「それは、マザーシップってことだよ」と答えたそうです。
マザーシップという言葉を太宰治流に訳せば「母性」。男性である太宰が男の本質を「母性」と表現するとは、少し不思議に思えますが、彼はこの言葉で「男性が求めてやまない本質は母性である」と伝えたかったのでしょう。
上述の雑誌を産経新聞上で紹介した記者は「太宰文学には、包み込むような母親的な優しさがある。その母親的な優しさに多くのファンが魅せられ、取り込まれ、読み継がれている」と書かれておられましたが、確かに太宰の作品を読んでいると、妙に柔らかく落ち着いた安心感を覚えることが出来ます。これは、彼の作品から醸し出される「母性」の効果に他なりません。
母性って一体どんなこと?
太宰治は、その代表作の一つ『人間失格』において、「何の打算も無い好意、押し売りでは無い好意、二度と来ないかも知れぬひとへの好意、自分には、その白痴か狂人の淫売婦たちに、マリアの円光を現実に見た夜でもあったのです」と綴っていますが、まさに「聖母マリアによる打算の無い好意」が、彼にとっての「母性」を表現しているようです。
太宰治は、男性として、自分自身が女性に求めてやまない母性を自らの作品に秘めることで、幾世代をも超えて、沢山の男子を虜にしてきたのです。
「母性」は、母親が無償で子供に与える優しさや愛、そして癒しの源泉でもあります。
精神心理学で有名なフロイトも指摘する様に、殆どの男性は、母親の持つ母性が故に、母親を生まれてはじめての恋愛対象として認識すると言われます。それほど「母性」とは、男性にとり抗いがたい女性的魅力のエッセンスなのです。
如何でしたか?
太宰作品の中では、まず入門編として『人間失格』『ろまん燈籠』『ヴィヨンの妻』などがおすすめです。
秋の夜長。あなたも太宰治の作品を読みながら自分自身の感性で母性を感じ取ってみてください。そうすることで、男心をくすぐる秘密のエッセンスがあなたの中にももっと芽生えてくるはずです。