「うつ」「引きこもり」の始まり


始めの頃はA子さんも努力していたのです。ご近所の人と積極的に話すようにしたり、ご主人の会社のイベントに参加したり……。

しかし、ここに別の問題が生じてきました。そういった人たちの会話があまりに早く、聞き取れないことがしばしばあるのです。社会に出て初めて、語学学校の先生はかなりゆっくり話してくれていたことに気づきました。
また、自分の言葉が通じなくて、何度も聞き返されたりすることがあると、すっかり自信喪失して、だんだん話すのが怖くなってしまいました。

これが“負のスパイラル”の始まりでした。取り巻く環境の激変と自身の内面的な落ち込みから、A子さんには「うつ」症状が現れるようになり、完全な「引きこもり」になってしまったのです。

生活リズムも乱れ、どんどん悪循環に
昼間はだらだらテレビを見たりネットサーフィンをしたりして過ごします。買い物に出られないので、食料品などはたいてい週末に2人で買い出しに。ご主人と一緒だったら外出できますし、夫婦の会話もあるのですが、1人では何もできません。スナックやインスタント食品ばかりで食事内容が乱れ、体力が低下して、ますます覇気がなくなってきました。

メールで日本の友人に窮状を訴えたこともありましたが、真剣に取り合ってもらえず、「優しいダンナさんがいて、外国に住めるのに、何ぜいたくなこと言ってんの」と言われてしまい、それ以来、誰にも相談できなくなりました。家族にも、心配かけるといけないと思い、何も伝えていません。

A子さんとしては、結婚生活は“楽しかった留学生生活の延長”のように捉えていたのに、思いもよらない環境の変化に直面し、それ以上に、明るく積極的な性格だった自分がまさか引きこもりになろうとは……と、自身の変調にもショックを受けていました。

それでも、「克服しよう」という気力は湧き上がってこなかったのです。無気力は生活全般に及んでいきました。

夫婦仲にも影響が……


結局、A子さんの引きこもりは1年近く続きました。

症状が出始めたころは、叱咤激励していたご主人。うつから来ている変化とは夢にも思わず、ただ「やる気を出さないだけ」「怠けている」と考えていました。改善のための話し合いを何度も持ちかけ、夫としての要求も突き付けてきましたし、「君には失望した」という言葉をA子さんに投げつけることもありました。

説明したくても、A子さん自身、自分の状態をうまく言葉にできず、夫婦の間にギクシャクしたものが漂うようにまでなってしまったのです。


2人でともに解決法をさぐった結果は……