Y子さんとしては、お母さんから連絡があると、つい「いいわよ」と言ってしまうわけです。母と娘ですからね。
それをあとでご主人に話すと、Y子さんがひとりで勝手に決めるのはヒドイだろう、僕にちゃんとお母さんが来ていいかどうか聞くべきだろう、と突っ込まれ、Y子さんはY子さんで、母がせっかく遊びに来たいと言ってるのに、と思っている……。
それで散々もめたのだそうです。
そういうケンカが何度かあった後、お母さんから電話が来ても、「いや、ちょっと彼に聞いてみないと分からない」と言うようになりました。
すると今度はお母さんがおもしろくないわけです。
「娘のところに自由に行けないなんて、あんた、なんなの?」となり、お母さんとケンカになってしまう……。
ご主人は相変わらず「ボクの許可を得ないで、勝手にお母さんに来てもらっては困る」という主張を変えなかったので、Y子さんがどうしてもご主人とお母さんとの板ばさみになってしまっていたのです。
「アメリカ人って相手のプライバシーをすごく大事にするから、誰かの家に行くにも、前もってきちんと段取りを組んで行くんですよ。日本人ってそのへんが、ちょっと……。特に母は、自分のペースで進めないと気がすまない人で、父も好きなようにやらせていてそれが当たり前で来ちゃった人だから、『娘のうちなんだからいいでしょ、ちょっと連絡して行けば』っていう感覚なんですね。だから彼と合うわけがない。
まあそんなことで、主人と母との板ばさみになって、ものすごく苦労しましたね。とても嫌な思いをしました」
結婚する前は、猛反対する親戚に対して、最後までY子さんの味方になってくれたお母さんだったのに、意外な展開でした。
ところで、お父さんはどうなさっていたのでしょう?
「父は物静かであまり自己主張する人ではなかったので、心の中ではいろいろ思ったでしょうけど、『世の中にはもっとひどい男がいっぱいいるのだから、そんなことは些細なことだ』って言って、おおらかに受け止めてくれていました」
なんだかホッとしました。きっとY子さんに見えないところで、お母さんとご主人との潤滑油になっていてくださったのではないでしょうか。