【味覚・嗅覚】
まず、食物であるから最初は味覚から考えてみたい。プラス条件としては、そばを口にするとき、誰もが真っ先に期待するのが豊かな「タンパク質の旨味」であろう。それが「しなやかな食感」と「小気味のいいのどごし」を伴い、食道をすべりおちる感触を楽しむのはそば好きにはたまらない。いっぽう、排除したいマイナス条件としては麺の芯に「粉っぽさを感じ」たり、麺が口の中で「歯ぬかり」したりするのはいただけない。そばの味覚とは、これらの5つの条件が整うことが理想である。この他に、香りを味わうという楽しみを忘れてはいけない。ただしこれは、材料の良し悪しがストレートに反映される条件なので、香りの悪い粉をどうやっても技術でカバーできるわけではない。その逆に、残念ながらどんなに素晴らしい粉も台無しにしてしまう打ち手はいる。香りの楽しみは、別格なのだ。