それでいいのだ! そば打ち男
これは、私が築地そばアカデミーの教壇から、いつも受講生の皆さんにお話していることです。
そばというものは、良いことも、悪いことも、すべて高い再現性があります。どんな小さなことでも思い違いをしていると、悪循環のループから抜けることができずにもがき続けることになります。また、一度打ち方のスタイルが確立すると、それこそ目をつぶっていても打てるようになります。
蕎麦打ちは、自転車のりや鉄棒の逆上がりににているかもしれません(そして、その程度の難易度なんです)。
そば粉は、加水された瞬間から蕎麦打ち人に対して、いろいろなメッセージを発信し続けます。上達を目指すみなさんは、このそば粉からのメッセージをしっかりとキャッチして、いますべきことを正確に行えばよいのです。言い方を変えると、そば粉からのリクエストに即応できる力をつけるということでしょうか。
そば打ちは、粉の品質や、湿度、そしてそば道具、打つ環境などに大きく左右されます。そばが発信してくるメッセージは、どれも「そば語」には違いないのですが、時にはカジュアルであったり、思いきりフォーマルであったり、耳慣れない方言であったりします。経験豊かな蕎麦打ち人は、どんなそば語であってもきちんと聞き分けて、その場その場ですべき対応をそつなく行います。ところが、発展途上の蕎麦打ち人は、耳慣れない言葉を聞いた瞬間に心が舞い上がってしまって、崩れるように失敗に突き進んでしまうのです。
蕎麦を習うのですから、練習中に失敗することは全く悪いことでもなく、恥ずべきことでもありません。私はいつも、教室では「失敗」していただくことをお薦めしています。そばは、粉と水と力のせめぎ合い(といっても、そんなに力はいりませんが)ですので、実はそばの失敗というのは、正しい手順より少しだけ力が入り過ぎた結果なのです。
そばの生地を破いたり、包丁がきれいに揃わないというタイプの方は、ほんの少しの事柄を修正するだけで、見違えるように上達してしまいます。
問題は、その逆にあまり冒険しないで、手の動きが小さく、おそるおそるそば粉に触り、麺棒も上っ面をころがすだけで生地に力を与えようとしないタイプです。そんな引っ込み思案では困ります。元気が余って失敗しないとそばの限界が見えてきません。
そばの技術については、稿を改めて記述してまいりますが、「蕎麦打ち女」「蕎麦打ち男」に、上達のための一言を差し上げましょう。
『失敗を怖れるべきではありません、堂々失敗して、その次には行過ぎを修正して正しい手順に一歩近づいてください。』
それでいいのだ! 蕎麦打ち男(女)
こちらは、2007年の秋から私が日経夕刊に長期連載している「今日からビギナー/そば打ち」の関連情報をフォローしているblogです。もちろん著作権の関係で記事そのものをここでご紹介するわけにはまいりませんが、このブログの記事は各方面のご協力のもと掲載を実現した貴重なものです。そば打ち男・そば打ち女の皆様に、技術的な面で少しはお役にたつと思いますので、ご興味のある方はぜひアクセスしてみてください。
▼日経記事連動ブログ
▼そば関連情報
▼ロングラン記事「12歳のそば打ち」