見事にそばを啜るオーストラリアのセレブシェフ
蕎麦と出汁の香りがする暗がりの中で、メイクアップをほどこされた顔にライトが当たる、隣には、あの新丸ビルの人気店「Salt」のオーナーシェフ、であり、華々しい実績をもつルーク・マンガンさんが軽口を飛ばしながら蕎麦を啜っている。
▲ここは、やぶそばの一隅、メイクされた顔にライトがあたる
彼がどうだ俺の啜りっぷりはと訊ねてきたので、「ああ、ルークは最高の啜り屋だよ」って答えてやった。ルークが、吹き出す。台本など、ない。
ディレクターからの演出指示は、たった一言「Be spontaneous(自然に)」。ふと、映画Lost in translationで、出来の悪い日本人通訳がビル・マーレイにカメラマンからの注文を思いきり端折って伝えたシーンを思い出した。 思わず苦笑いしたその顔が思いの外よかったのか、監督さんはサムズアップ(親指を立てる動作)でご機嫌だ。
ロケーションは、ご存じ、あの神田のやぶそば。11時半の開店までの45分という約束でとりつけたという撮影時間。この光景を、やぶの女将さんが大きな眼を見開いて、びっくりしたような顔で眺めている。どうです、この状況。夢か劇中劇みたいな、なんだかとてもヘンな感じ(笑い)。
それにしても、ルークの啜りっぷりは、見事だった。やぶの女将さんも、こんなに上手に啜れるガイジンさんははじめて見ました、と、太鼓判。
この日初対面のルークに「練習してきたの?」って聞いたら、「いや、Akilaの教え方がよかったからさ」と、ヨイショが巧いのも江戸ッコぽいね。いい奴だ!
しかし、この啜りっぷりなら、やぶに限らず、東京中のそば屋で瞠目を集めることでしょう。いやお見事!!
このロケは、全米1,000万世帯に向けたテレビショーのヒトコマである。こういう企画が通ってしまう位に、米国のそば熱は本物となっている。そばの人気と需要に供給が全く追いついていないのだ。米国で起業をお考えの皆さん!いまならそばが旬かも。