ハンガリーワインとの相性
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Chateau Teleki-Villany (Csanyi) |
ピック社はチャーニイという生産者が造るワインも扱っている。ハンガリー最南部のワイン産地ヴィラーニで産するワインである。ブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロといったボルドー品種、あるいはケクフランコシュなどの地元品種を使って造る赤が多い。チャーニイが造る熟した果実味たっぷりの赤で、カベルネ・フランを使用したものを試飲した。マンガリッツァを焼いて塩を振ったものと合わせると、しなやかな渋味が脂と混じり合って、好印象である。
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マンガリッツァの脂も製品化されており、このラードを使うことで料理の風味がよくなる |
豚肉は白身なので、あっさりした調理法ならハンガリーの白ワインでも充分合うはずだ。特に、マンガリッツァの旨味や脂肪分と釣り合うようなコクがある白ならば、申し分ない組み合わせだろう。辛口白ワインでもいいが、甘味や脂肪がある料理なら甘味のあるワインも合うことが多い。現在、マンガリッツァは精肉とサラミが輸入されており、輸入された精肉を日本で加工されたパンチェッタも作られているというから、おつまみや料理に応用範囲が広い。
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展示会で冷蔵ケースに並ぶマンガリッツァ(現在輸入されているのはロース、肩ロース、バラ) |
実は全国マンガリッツァ飼育業者連盟では、マンガリッツァ豚にマイクロチップを埋め込んで原産地証明書を発行している。一頭の豚が生まれてから屠畜まで、そしてその肉の流通までを管理するためである。また原産地証明書とは別に、祖父母までさかのぼった血統証明書も発行される。詳細に至るまで記録を残す厳しい管理によって、本物のマンガリッツァ豚以外が紛れ込むことのないよう監視されているのである。食品の信頼性が求められるいま、じつに真っ当なアプローチである。
マンガリッツァは生産量が少ないため、現在は主にレストランで提供されている。ハンガリーの「食べられる国宝」と称されるこの豚をメニューに発見したなら、ハンガリーのワインと一緒に味わうといい。マリアージュの中に、ハンガリー独自のテロワールが感じられるはずだ。