オーナー自身が通いたくなるワインバー
押上の味噌問屋で3代目となる遠藤誠氏は、修業に出た醤油メーカーでワインを学んだのがきっかけで、現在はワインスクール『アカデミー・デュ・ヴァン』の講師として、そして『日本ワインを愛する会』事務局長として日本のワイン界でも知る人ぞ知る存在である。自社でワインの販売を行ってきたが、倉庫として使っていたスペースを改装してワインバーを開いたのである。かつての屋号を復活させ『遠藤利三郎商店』とした。店舗デザインは「ペニンシュラ東京」を手がけた友人の橋本夕紀夫氏に依頼しており、モダンで落ち着く雰囲気となっている。「気軽でも本格的な料理と、2~3千円台で飲める美味しいワイン。自分自身で通いたくなるような、気軽なワインバーにしたかった」という遠藤氏。「それから、普段はビールや焼酎を飲むことが多い地元の人に、ちょっとハレの気分でワインを飲んでもらえるように……」というように、店内は温かな木材の肌触りを中心にしながら金属やスポットライトなどのモダンな要素も配されており、落ち着くいっぽうで適度なスタイリッシュさを醸し出している。
開店時間からほどなく、既にひっきりなしに客が来店する。カウンターに座る独り客やカップル、樽をそのまま使ったテーブルには年配のグループ。母娘らしき二人連れ、友人数人といった中年層や会社員……客層の顔ぶれが多彩だ。しかも近所や地元の客もかなりいるようである。