穏やかな品格
ヴァンサン・レシュノー氏 |
瓶詰め直後の不安定な味を想定しながら、ベーシックな村名格付けのニュイ・サン・ジョルジュ』2006年を飲む。ところが真っ先に感じられるのは、とてつもなくやわらかな調和の取れた味わい。その後にしっかりとした酸味となめらかな果実味が続くが、澄みわたるような静謐さは独特の雰囲気である。
「2006年は今飲んでもおいしいですね。私たちはブドウの完熟や醸造での抽出を目指すのではなくて、ピノ・ノワールらしくバランスの取れたスタイルを目指しています」と語る彼の差し出すレ・ダモードの2006年を試す。先のワインよりさらに、洗練されている。味わいにしっかりと厚みがあり、果実味や酸味が程よく長く残る後味。もう5年から8年ほど瓶熟成させてみたいポテンシャルを感じる。
「1985年に父の後を継いで、90年頃から造り方は変えていません。年によって除梗(果粒の付いた枝のような部分を除く)する割合を変えており、破砕(醸造前に果粒を圧し破る)はしません。摂氏10度で5~7日の低温浸漬を行います」と、1級畑レ・プリュリエ2006年を注ぎながら彼の説明。まだ風味が開いていない重厚なワインで、わずかにオレンジや花を感じさせる華やかな香り。これは10年近く寝かせたい。
最後にレ・ダモードの1990年を試す。ヴィンテージから17年近く経とうとしているこのワインをデカンティングして6時間ほど経ったもので、ちょっとほこりっぽい漢方薬や乾燥スパイスのような熟成香が豊かで素晴らしい味わいだった。上級キュヴェにも樽香が感じられず、ブドウの地域性を生かしている。
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