ワイン/ワイン産地と生産者のレポート

「海外でワイン造り」の日本人が語る(3ページ目)

海外に出てワインを造る人は多いが、華やかなイメージの裏には驚くべきドラマがある。楠田浩之氏とビーズ千砂さんが語る、ワイン生産者の現実とは? ワインの香り成分研究の富永博士も登場。

執筆者:橋本 伸彦

「自分なりの答えが出る」

赤ワインの入ったグラス
ピノ・ノワールに熟成感があった
初めて自分のワインを造ったのが2002年。資金が潤沢ではないのでシューベルトの施設を借りて造った。熟成用の樽だけは中古だとブレタノマイセス(異臭を生じる酵母の一種)を招くので新品を買った。その後、酪農用のタンクを買ってワイン用に改造するなどして揃えていった。畑を吟味し、そこで使う資材も植え方や支柱の強度など考えて選んだ。

経営は未だに難しい。現地や日本で、テレビや雑誌などメディアに取り上げられてはいるが、ワインの売れ行きにさほど大きな伸びはない。2004年には畑のリース契約を一方的に打ち切られ、2005年は雨が多くワインが造れなかった。今年は遅霜にやられて収穫は8割減。だが彼は、戦い続ける。

彼のワインを試飲した。「無我夢中でピノ・ノワールの応用で造ったが、自然の力があって結構よく出来た」と謙遜する2002年のカベルネ・ソーヴィニヨン。よく熟した果実味があり、酸化熟成感もありながら、ほんのりとエレガントな熟成香を漂わせる。

ピノ・ノワール2004年は、5歳の若樹から収穫したブドウをシューベルトから購入した。デリケートな芳香を伴ってなめらかな後味がなかなかよく持続する。同品種の2003年は「C」(Clay=粘土質土壌)「G」(Gravel=砂利質土壌)の2種類造られた。Cを試したが、16歳の接木をしていない樹で乾燥した年だが灌漑していないというだけあり、香りも味もブドウの凝縮感がある。コーヒーのようなスモーキーさや香ばしさがナッツ的な熟成やオークの香りと調和する。

「この年は一般にピノ・ノワールにはタブーとされているポンピングオーバー(発酵中の果汁をタンクの底から固形分の上へと循環させる)をしっかり行なったが、今飲んでも酸化していない。あと2~3年で自分なりの答えが出ると思っています」というだけあって、この熟成はかなり上出来である。

これからのワイン造りは?>>
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