ワイン/特別な日の高級ワイン

秋の夜長に、とろとろと。日本の貴腐ワイン(2ページ目)

甘い甘い、甘美なネクタアを飲みませう。婦女子の飲み物と侮ってはなりませぬ。通を気取って一口飲めば、杯は止まらない。いつの間にやらとろり、とろり……

執筆者:橋本 伸彦

本当に貴腐になるの?

ブドウ品種はシャルドネが主体。世界的にもシャルドネの貴腐ワインはごく少ないこともあり「ホントにシャルドネに貴腐が付くんですか?」と訊かれる。シャルドネにセミヨンをブレンドし、果実味や複雑さを補うための隠し味としてごく少量のケルナーも加えるという。ケルナーはしばしば、甘口に仕立てた時に白桃のような風味をかもし出す。殊にシャルドネは風味にでんと重さのあるブドウで、セミヨンもまったりねっとりした味わい。ケルナーの軽やかさそしてフルーティーさがこれらの品種に加わってさらに奥行きを増しているに違いない。
シャルドネ種のブドウの葉と、ザ・ゴイチのボトル

秋の夜長に

きのこやら栗やら、秋の恵みを生かした食卓に日本のワインを合わせてみよう。たとえば薄味で精妙な出汁にデリケートな甲州種ブドウのワインを合わせる。少し旨味のある照り焼きなどには、マスカットベリーAのたっぷりとした味わいの赤を。さて、デザートになりそうな果物も菓子もないが、それだけで終わるのでは寂しい……そんな時に少しずつ飲みたいのが、ザ・ゴイチのような甘露である。ことに大勢の場合など、少しずつ注ぎ分けても特別な満足感がある。貴腐ワインの良いところだ。ゆるり、ゆるり、とろとろと。秋の夜長の醍醐味である。
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