アルベルトとの対話

ミケーレ・キャルロ氏には息子がふたりいる。醸造を担当するのがステーファノ、マーケティングを担当するのがアルベルトである。ワイン生産者にはよくあるパターンだが、兄弟のなかでも内省的で人見知りするようなタイプが畑やワインの世話をし、社交的なタイプが世界中の取引先から小売店、一般消費者まで相手にワインの販促につとめるということか。適材適所、である。


アルベルトが待ち合わせの場所にひょっこり現れた。アルベルト・キャルロ氏、というよりアルベルトである。ワイン会社のマーケティングにありがちな、人を値踏みするような態度はみじんもない。やあ、と久しぶりに会った友人のようにカフェのテラス席についた。エスプレッソですか?と訊くと、いやフルーツジュースにしよう、と言って旨そうに飲み干した。

それからというもの、彼は言葉を選び、ときに考え、キャルロ家のワインについて語りつづけた。畑にセンサーを設置して気温や降雨のデータを集めたり、10km四方の地域の48時間後までの天気予報が分かる気象衛星情報を使う。ネッビオーロの長い房を育成に従って整形し球状に近づける。白ワインではアロマとなる物質の分析をして収穫。ユニークな工夫から生まれるのは、コルテーゼやモスカートを使った白、バルベラやネッビオーロの赤と、品種と畑の個性をぐっと引き出したワインの数々である。

イタリア料理店『サドレル』にて

ガヴィ『フォルナーチ』の色合い
イタリアのミシュランニツ星レストランのシェフ、サドレル氏が出店した六本木のレストラン『サドレル』。この日はキャルロのワインと料理長アンドレア・トランケーロ氏の料理を合わせるという趣向。シェフ・ソムリエの鈴木恭治氏によって念入りに準備されたワインの状態、温度管理、グラスとも申し分ないものであった。

ガヴィがきちんと旨い…どちらかと言えば珍しいことだ。キャルロのワインに期待が高まった。2002年の「ロヴェレート」というキュヴェだが、ガヴィ地区にありがちな、あの水っぽくて酸っぱいワインとは全く違う。一部を低温で浸漬し、香りと熟した風味がしっかりある。爽やかさ、まろやかさ、バランスもよく好印象である。

このワインに合わせて特別に供されたのは、「ツナを詰めたカルマニョーラ産ピーマンの軽やかな燻製 自家製チーズを添えて ヘーゼルナッツ、蜂蜜と共に」。たっぷりと肉厚な赤ピーマンにツナを詰めて、伝統的な取り合わせのナッツと蜂蜜を添えた一皿。加熱した赤ピーマンに出る、さっくりとやわらかな甘味、ややとろりとした食感。そしてツナのコクや旨みも、ワインのなめらかさや豊かさとハーモニーを奏でている。

赤ピーマンのしっとり感に注目!分厚く、香りと甘味がある

この料理に続き、ウサギのラグーのラヴィオリに季節のアスパラを添えた皿に合わせて供されたワインは、ガヴィの『フォルナーチ』2003年。ガヴィにしてはかなり深い色合いとわずかなとろみがあり、コルテーゼというブドウのポテンシャルを見直してしまうような出来である。ところが続く赤ワインと比べれば、これはほんの前触れだった!


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