アプローチ
茶の湯では茶室と露地を一連のものとみなすために茶室へ導く道を住宅建築でつくるための工夫があります。
高山氏設計の茶室と茶室へのアプローチ。〈画像提供 TIK建築研究所) |
また、別の設計ではビルの3階住居をお客様をもてなす茶室的食事室へと改装。この改装においても茶室設計の要素として建物内部から一度外に出て、再び建物に入るアプローチを設計。こういったアプローチの脇には植栽などによって3階にいながらもお客様に自然を感じてもらうのを狙いとしています。
高山氏は建物の上下を巧みに利用。1階のリビングに面したテラスから外階段を下りて地下にある茶室へ向かうアプローチ(露地)となるように設計し、庭(ドライエリア)にはつくばいも設置してお茶室と庭を一体に設計。
茶室へ向かう距離とそこへ向かうまでに目にする自然やしつらえは、迎えるものの気遣いであり、迎えられるものの安らぎが生まれてくるものです。逆に何もしつらえていないアプローチは、すっきりしていても訪れたゲストには緊張感がいっこうに抜けないでしょう。
水屋
高山氏は床の間の位置、炉の位置など茶室の流儀を軸にしながら設計に工夫を施しています。茶室には必要とされる水屋もクライアントの住宅事情によってはクローゼットの中に作り、使わないときは扉を閉めて隠すことができるよう設計。また、マンションでも有効だと思われる置き水屋を設置する事例も紹介していただきました。
茶室のあり方
2人の建築家の茶室
2階の茶室。洋風の1階からアプローチとなる階段を上っていく途中にも花や光のしつらいがゲストを迎える。〈画像提供 TIK建築研究所) |
1階の洋風リビングから階段を上っていく途中に露地のアプローチのように、光、花のしつらいをし、2階に上ったとたん階下とは別世界の和のしつらいで意外性の感動を狙っています。
一体となったフローリングと畳。広く、自由に使うことが出来る和空間はしつらいによりゲストを招く茶室にもなります。〈画像提供 空間設計研究所〉 |
これらはマンションで暮らす人にとっても実践できること。茶室までのアプローチにはできる限り自然を感じられるように匂い、音、光などをしつらえるとよいそうです。
もっと身近になるお茶空間
紅茶にも通じるしつらいと精神
〈画像提供 空間設計研究所〉 |
茶事をとりまく一連のこと、とりわけお客様を迎えるための準備、季節感のあるしつらえ、自然を感じられる演出、ティーテーブルだけでなく玄関からゲストを迎え入れるための演出が一層お茶の時間を楽しくさせてくれるのでしょう。
「茶道とはお茶室を作らなければならないように思われているが、正式に茶室を作らなくても対応できる。炭炉でなくても、電気炉は扱いは簡単だし、置き炉、またポットを使うことも出来る。ポットを使って茶碗に注ぐ方法ならリビング、テラスでもお茶を入れられる。」と高山氏。さらに「お茶椀、茶杓、棗(なつめ)なども大きさ形が合いそうなもので代用することもできる。そういう見立てもお茶の楽しみ方のひとつである。」
利休の教えである利休七則のひとつに「相客に心せよ」とあります。ひとつの茶碗のお茶をいただくもの同士は、互いに思いやりをもって同じ時間を共有するという気持ちを大切にすることを説いている言葉です。
お茶を楽しむ場が用意された後、お茶の場を和やかに相手を思いやりながら楽しく過ごすということは、あらゆるお茶の精神に共通するということでしょう。
■協力: 株式会社 リビング・デザインセンター OZONE
■関連リンク
株式会社TIK建築研究所 高山和則氏のオフィス
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