紅茶とも相性のよい柑橘系果実。(イメージ写真)
良い香りをかぐと気持ちが明るくなります。
みなさまは「紅茶の香り」と聞くと何を思い浮かべますか?
フレーバードティーのように印象の強い香りを思い浮かべるのではないでしょうか。フレーバードティーは実際に何が着香されているか「アップル」とか、「マンゴー」と商品名とくっついているのでわかりやすいですね。
しかし、紅茶そのものをじっくり香ってみると特定の花の香りがしたり、樹木の香りがしたりと紅茶にも豊かな香りが存在します。現在、紅茶には約600もの成分が確認されているそうです。
夏の疲れた体に紅茶とその香りで癒されているという方のために、ここで紅茶と香りについて2回に分けてご紹介しましょう。第1回は紅茶から生成される香りについてです。

紅茶が放つ香り


紅茶の商品説明にマスカットの香りとか、蘭の花の香りがするという説明をみかけることはないでしょうか。紅茶については花やフルーツに関係した表現が多くされているのです。では、紅茶の香りはどのように生成され、どういった特徴があるのでしょうか。

香りは専門的には「香気」と呼ばれます。紅茶の香気成分は摘み取った茶葉を日陰で並べ、柔らかくしおれさせていく工程で一気に発生し始め、さらに発酵を促すために揉み、篩い分けをした後の発酵においてさらに香気成分が生成されます。萎凋(いちょう)によって茶葉の香気成分は生葉の約10倍になり、揉捻、発酵によってさらに約2倍になると山西 貞先生の研究(*)では発表されています。      

ヘッドスペーストラップ法により分析のために花から香料成分を抽出します。(イメージ写真)
私たちの身近で分かりやすい表現を用いれば、
主な紅茶の香りは大きく分けて、
フレッシュなグリーン香(ノート)
フルーティーなマスカット香(ノート)
スズラン、ローズ、ジャスミンのような花の香り
スイートな香りに分けられます。

また、紅茶の産地によっても香気成分が異なります。
インド
ダージリン :マスカット、ローズ、ジャスミンのようなフローラル香。
アッサム: ローズ香はダージリンより少ない。

スリランカ
ウバ:メントール、フローラルグリーン香。
ディンブラ:メントールの香りは少なく爽快な香り。

中国
キーマン:ランの香り。甘いリンゴの香りなど。

紅茶の主な香気成分となっているのはゲラニオール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコールなどで、これらの成分がはっきりとどの香りに値するというわけではありません。

紅茶の香りは紅茶生産地で作られる紅茶特有の成分含有バランスによってローズの香りを感じさせたり、ランの香りを感じさせているのです。紅茶にはとても豊かで芳しい香りが存在するということを知って紅茶を飲むときにはその香りをじっくり感じてみてください。

紅茶から作られるフレーバー


さて、紅茶のすばらしい香りは、紅茶から抽出した紅茶フレーバーとなって、私たちの生活で紅茶味の食品に使用されています。例えば、紅茶プリン、紅茶ケーキ、紅茶クッキー、紅茶キャンディ、紅茶飲料などが挙げられます。紅茶フレーバーは使用される食品ごとに調合されます。

例えば、紅茶ケーキには紅茶の茶葉や紅茶液が入っているものもありますが、市販されている紅茶ケーキには紅茶フレーバーも用いられるケースがあります。ケーキを焼く際に茶葉や紅茶液だけでは加熱によって香りが揮発しやすいために、加熱にも耐えうる油溶性紅茶フレーバーが用いられて香りを補うことが目的です。

紅茶飲料の多くにもミルクティーにあった紅茶フレーバーや、ストレートティーにあった紅茶フレーバーで香り付けされることが一般的です。例えばミルクティーでは乳成分が加えられるために紅茶の香りが弱くなります。香りを補強するためにフレーバーが用いられるのです。

市販されている香料として最もポピュラーなのものに、バニラオイルやバニラエッセンスがあり、家庭でお菓子作りによく用いられています。紅茶オイルや紅茶エッセンスがまだ手軽に購入できないのは残念ですが、自宅で茶葉や紅茶液をいれて焼いた紅茶ケーキより、買ってきた紅茶ケーキや紅茶クッキーがとても良い紅茶の香りがするのは香料が用いられているためなのです。そして、紅茶フレーバーのエッセンスが市販されないことの理由のひとつとしては、紅茶フレーバーは目的とする商品にあわせてひとつずつ異なった紅茶フレーバーが作られているため、ひとつの紅茶フレーバーとして販売するのに適していないと考えられているようです。

第2回は、「紅茶に与えられる香りとフレーバー」について掲載します。
(*)山西 貞先生『お茶の科学』参照。

■写真提供:ジボダンジャパン株式会社(英語)

■取材・協力
ジボダンジャパン株式会社 土屋 一行氏
日本香料工業会
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