静岡県藤枝市、桜並木が続く瀬戸川のほとりにある日東紅茶藤枝工場。鑑定室は管理棟3階の北側部分に位置し、自然な柔らかい光が差し込み、ここで紅茶の品質鑑定が行われています。北の窓に面するところに細長いテーブルが設置され、手前側にカップを並べるための溝が掘られています。そこには1度に25-30種類の紅茶がテイスティングされるのを待っています。
そもそもブレンドってなぜ必要なの?
毎週送られてくる紅茶のサンプル |
紅茶は農産物であり、自然の恵みです。その年の天気、土壌などの環境によって、また茶樹の品種、栽培法によっても品質は変化し、全く同じ品質の紅茶はありません。ブレンドしていないオリジナル紅茶は、水色は濃いが香りの薄いもの、水色が薄いが香りの豊かなものなど、水色、香り、味と三拍子そろった紅茶にめぐり合うことは極めて珍しい。個々の紅茶の長所を生かしながら、短所を補うことがブレンドをすることによって得られるのです。
通常、ブランド銘柄の紅茶はブレンドされています。ブレンドは、年間を通して完成した一定の味を私たちに提供するために行われているのです。そして、そういったブレンドに対する信頼と安心を与えてくれているのが、ティーテイスターなのです。
紅茶の鑑定はどのように行われる?
神経を集中、1点1点テイスティング。スプーンでかき混ぜながら瞬時に水色、香り、味などを調べます |
日東紅茶のカップテストの方法はアメリカ式で行われています。この方法は多くの紅茶を一気に鑑定しすばやくその特徴を評価出来るのが特長です。まず、カップに3gの茶葉を入れ、茶葉によって3-5分浸出させる。時間がきたら、茶葉はカップに残したまま、一気にテイスティング開始です。一度にテイスティングする数は25-30。同じグレードの紅茶をテイスティングします。
スプーンでかき混ぜながら、香りを調べつつ、茶殻の状態を調べ、ズズーと音をたてて、紅茶液を口全体に送り込み舌で転がし、渋み、香り、ボディや水色発酵具合をみていきます。ティーテイスティングはもっとじっくりメモをこまめにとりながら進められていくのではないか、というイメージがあるかもしれません。しかし、早く、一気に調べてしまわないと味が変わってしまうために、同じリズムでスピードに乗りテンポよく進められていきます。
日東紅茶の味はすべて頭の中に入っている三浦さん |
さらに質問してみました。「このアメリカ式だと茶葉がカップに残ったままなので渋みが余計に出てしまうのではありませんか?」との問いに、三浦さんは「紅茶はもともと少し濃く入れて長所短所が良く分かるようにして調べています。渋みは実際に強く出ていると思いますが、渋みでも良い渋みと悪い渋みがあります。後に残るようなエグミのような渋みは良くありません。」
つまり、一度にたくさんの紅茶を調べるためにアメリカ式を採用し、スピードとテンポよくテイスティングを行うことで紅茶の良い渋みを判別しているということなのです。日東紅茶のブレンドはテイスター自身の頭に入っているけれど、出来上がったブレンドに対しては確認のため前2回のロットサンプルと比較して味が変わっていないかも調べるそうです。どのようなブレンドも安定した香味にすることがブランド紅茶を担うものの大きな役目でもあるのですね。
ティーテイスターに求められる才能・素質は?
味の記憶がティーテイスターに求められる |
三浦さんのような熟練したティーテイスターになるために、日東紅茶ではスリランカ、インドなど、紅茶生産地での製造買い付け、テイスティングの研修も行われます。紅茶産地は厳しい環境のところが多い上に、朝9時過ぎくらいから1日1000カップくらいのテイスティングを行うそうです。ようやく昼食につけるのが午後3時半とか4時くらいだとか。
日東紅茶クラシックシリーズについて
1月半ばにネット販売での日東紅茶クラシックシリーズが発売されましたが、このシリーズは鑑定暦30年の三浦さんがより上質の紅茶を求める人たちに向けて作られたそうです。紅茶の生産地の気候、土壌の特徴、生産地の紅茶の特徴をすべて知り尽くした上で、それぞれの良いところを選んでブレンドされた4商品。「ダージリン」、「アッサム」、「ウバ」、「クラシックブレンド」のどれもが逸品であり、香味のバランスが良くまとまり、飽きられない、欠点の見つけようの無いブレンドに仕上げられています。
【関連リンク】
■日東紅茶
撮影協力:三井農林株式会社