パン、遊牧民のテントなどを意味する「パオ」。 気持ち良く晴れた日に、千葉県松戸の民家に併設されたパン屋自家製天然酵母パン工房 パオ を訪れました。 前庭では子供が遊び、開かれたドアからはパンの良い匂い。木の棚やかごに乗った ナチュラルなパン達。 売り場からガラス戸越しに明るい工房の様子が見えます。 パオのパンは国産小麦と数種類の自家製酵母で焼かれています。ごはんのように主食になるパンを作り続けて今年で7年目になるそうです。 パオのご主人、林耕生(こうせい)さんは、ノヴァのピエールブッシュ氏に師事、その精神を受け継いで 「その国で採れた作物で作るたべものがその国の人たちに一番美味しいはず」という思いを持ち、 ヨーロッパの伝統的な自然発酵を独自に研究して作ったパンを焼かれています。 パンは工業製品ではないのだから。国産小麦はパン作りに適さないなんて、そんなことはないのだから。 それを証明して行くパン屋さんのひとりなのです。(国産小麦の安全性 はこちら を参照) そんなパオの一番最初はこの先開業を考えている人にとって非常に興味深いものだと思いました。 そこにはこんな流れがあります。 耕生さんがパンを焼き始める前、最初にパオのパンを作ったのは奥様の侑莉子(ゆりこ)さんでした。 「こういう始まり方をしたパン屋には正直なパンしか焼けないんですよね。」と笑顔で語る彼女の瞳にも、 耕生さんと同じくらいの強さを感じました。 妊娠中にたまたまパン作りを始めた侑莉子さんの パンは、フリーマーケットやパン教室等を介してクチコミで広まり、それは小さな流れからやがて大きな流れに なって、いつしかご主人を先頭に進んで行く力強いパン屋さんになっていたのです。 パンドセーグルは軽くライ麦の全粒粉を配合。フランスパンにライ麦が入っている感じで トーストにサンドイッチに最適。軽くてこうばしいパン。 趣味の延長でパン屋に、と聞きますがこれを誤解してはいけません。侑莉子さんの趣味は半端ではないのです。 たくさんの種類の自然酵母を試し、育て、試行錯誤を繰り返してパンを作り上げて行く。 朝から晩まで、夢中になって取り組む日々。大変なことであると同時におそらく天職ともいえる素敵な仕事 との出会いだったのですね。 今は趣味でパンを焼いているけれど、将来パン屋さんを開業したいと言う人は多いようです。 そんな人に向けて、大事なことや必要なものについて何かヒントとなることを、耕生さんにお聞きしてみました。 自分達はパン屋開業が目的でパンを始めたわけではなく、ただ良いパンを焼きたくて毎日パンを焼いていくうちに いろいろなことが形になって今日に至っています。今できる事をひとつづつこなしていく人のほうが結果としては いい形に繋がっていくようです。辿り着くまでの道程を一歩一歩、何が起きるのかわくわくしながら進んでいくほうが面白いと思うし、 自分の思い描いた通りになるならないより、今できる事をやるかやらないかが分かれ目の様な気がします。 やはり哲学のあるパン職人さんでした。お聞きして、パン屋でなくても大切にしたいヒントだと思いました。
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