Moving Creativeな世界に
アレックスの料理の特徴は、練りに寝られたアイデアをもとにした、自分だけのオリジナリティあふれた現代フランス料理。それは特に野菜、魚料理に見て取れる。素材がそのままでは決して出てこない。必ず形を変えて、いくつかの組み合わせで構成される。魚もそうだ。蒲鉾のような魚肉にくるまれたゴンボス海老、サンピエールのポワレには下に白トリュフ、サクラエビ、マリネしたアンティチョークが敷かれ、食べ進みながら素材を動かして楽しむことにだんだんと気づいていく。魚料理は味わいも見せ方も単調になりがちだ。彼の料理を見ていると相当の引き出しを持っているに違いない。素材とソースは複雑に重ねられるが、味わいは一つになる。 |
ひと言で表現すると「Moving Creative」。料理やソースを動かして自分なりの食事の楽しみを見つけることができる。
これだけ食べてもさらに食べようという気になるのはきっとバドワのおかげに違いない。ワインより先に水が出てくるが、この微発泡の水がきっと消化と胃袋の洗浄を同時に処理してくれているに違いない。
では今宵のとびっくりの料理の中で何が一番旨かったのか。オマールのグリエもすごかったが、圧倒的に記憶に残るのは牛ヒレ肉のロースト。ほとんど生焼で、炭の香とスモークの香がほんのりと混じり合い、これまで感じたことのないエネルギーが沸き起こる。ガルニのモリーユ茸すら完全に脇役だ。
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香りの付け方に特徴があるメインディッシュ |
すべての皿が塩がきちっと効いており、決してゆるい料理ではない。一つ一つのさらに力が漲り、きっとそれはアレックスの今の状態が上り坂の非常にいいところにいるに違いない。。
サービスも楽しんでいる様子がわかる。ベテランの給仕長と若いスタッフが二人。どうすれば客が喜ぶか知っている。同じダイニングには6組16人のゲストがいたが、どんなときでも必ず一人はダイニングにいるという動きはまさしくプロフェッショナル。
デザートも次から次へとやってくる |
部屋は狭く決して快適とは言えないが鳥の声で目を覚まし、窓を開けると心地よい風がすーっと入り込む。車の音もほとんどない朝。雨がしとしとと降っているが、それはそれでいいではないか。バカンスの朝食は8時半くらいからだそうだ。パリに向かう電車が8時だったため、名残惜しくホテルを後にした。気になるお値段だが、料理、宿泊共に約1万円ほど。いいワインを飲んで2人で4万円もあればおつりが来るだろう。
左手が私の寝室のエントランス |
2008年にミシュランの一つ星を獲得した彼の料理は、今後新しいオーヴェルジュの完成と共に次のステージに上がるに違いない。今、最も注目すべき若手料理人を見つけて日本でプレゼンテーションをさせたアラン・デュカスの活動も見逃すことはできない。
とにかうフランスの魅力はパリではなく田舎にある。モントレイユの自然を観に、アレックスの料理を食べに、ぜひオーヴェルジュ・デ・ラ・グルヌイエールを訪れたい。
さあ、モントレイユを発ち、午後にはパリのアラン・デュカス・プラザ・アテネへ。
ラ・グルヌイエール(ノール・パ・カレ地方モントレイユ村)ホームページはとてもユニークで映像とシェフ、アレックスの肉声しか聞こえない不思議な作りになっている。
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