パリのビストロ
前回の記事でご紹介したフードフランス・ビストロのトップバッターはパリは2区にあるオ・リヨネ。1890年創業当時の面影を残す外観とリヨンの郷土料理が特徴だ。オーナーはこれまでずっとフードフランスを引っ張ってきたアラン・デュカス本人。さて、まずは総大将がどんな料理、そしてエスプリを運んでくるのだろうか。。ランチ前の緊迫した瞬間が続く |
これまでのフードフランスではフランスの地方のガストロノミー(美食)の「今」が伝えられてきた。今回からは「ビストロ料理」つまり、日常的よりもちょい上のフランス料理がどう表現されるのかというところがポイントになる。
まずは前菜のウナギのキノコのテリーヌ。これは赤ワインで軽く煮込まれたウナギをテリーヌ仕立てにまとめた伝統的なフランス料理。仕上げに振られた粗塩と共にウナギやキノコの味わいが浮かび上がる料理だ。軽めの味わいながら、食後感はまずまず。密度濃く積み上げられた素材の旨味が堪能できるのではないだろうか。
夏には定番のビストロ料理 |
アンティシューに上に乗るフォアグラのテリーヌはオー・リヨネのスペシャリテと聞く。このフォアグラはさっぱりとした味わいで、ほのかな苦味を放つアンティショーと一緒に運ぶと、とろける濃厚さよりもふわりとしたライトな食後感に包まれる。この料理に合わせられたのか、ガメイを使ったスパークリングワインとの相性もぴったりはまる、現代風のフォアグラ料理の登場か。
玉葱のヴィネグレットが爽やかさと共に味を締める |
クネルは本来はカワカマスを使うのだが、日本にないので白身魚のブレンドで登場。小さなザリガニ(エクルヴィス)も仕込まれる。(ちなみにカワカマスを空輸し使っているレストランは虎ノ門のサラマンジェのみ。)白身魚をスポンジ状に固めて、そこにバターを多用した濃厚な魚介類のソースを敷いてオーブンで焼き上げる、これまた伝統的なリヨンの郷土料理だ。いや、これが実に深い。
ザリガニの食感も楽しい |
日本人にはこれくらいのボリュームでちょうどいいのかな、ということと、ともかく食べ飽きずに皿を空にすることができる。カロリーは相当あろうが、そんなことはここでは忘れよう。
ちなみにクネルのルーツだが、1800年から1850年位の間に、とあるパティシエ(菓子職人)がたくさん採れたカワカマスをすり身にしてシュー生地を混ぜ込んで作ったのが始まりという。