鮟鱇の新しい姿
紅芯大根のエクラーゼの上に乗った鱈の白子のクロケット。隣は鱈のブランダード。う~ん、一皿に盛ってしまえば、と考えるのは今の時代、邪道なのか?と自問自答しながらシャブリと共に食べ進む。適度なマリアージュだが、明らかにシャブリの勝ち。料理がシャブリをさらに美味しく感じさせるのだからこれはこれで新しい発見だ。和的な雰囲気も漂う味わい |
素材の旨味を完璧なる裏漉しで実現した雉のブルーテ。これはこの季節だけの料理だろうが、この手のブルーテにはこれからも期待したい。手間はかかる料理だが、メインディッシュに向かう繋ぎとしてとても効果的な一皿と言える。
ローストされて小さくなった鮟鱇は煮詰めると甘さを感じさせるバルサミコを纏って登場だ。鮟鱇の旨味を新しい形で表現した意欲的な料理だと思う。鮟鱇が大好きだということを差し引いてもこの料理はてても印象に残っている。
食感がとても面白い |
残念だったのは鴨のロースト。ここで外して欲しくはなかったのだが、塩の緩さはたまたまだったと思いたい。いや、私のところだけふた振り足りなかったのだ。今思えば塩をもらえばよかった。。。とは後の祭り。フランス最高のピュルゴー家の鴨を前に、私はいつもよりもじっくり肉の味を噛み締めながら、ショレイのワインをソースに足して食べ進む。添えられるもう一皿はココットで。カスレ仕立てになっており、食欲を締め上げようという、最後に来てビストロチックな気遣いは何かほっとすするものがある。
じっくりと噛んでゆっくりワインと合わせたい |
18時に入店し、この時点で20時半。ここからが長いのが新しいフランス料理を楽しむ共通点かも知れない。チーズ、デザート、プティフール、そして多くの銘柄から選べるコーヒーや紅茶、ハーブティーの数々。普段は現実に戻りたくないなどという理由からコーヒーを飲まない私だが、ここまで並んでいるとついボタンを押してしまいそうになる。
メインディッシュを食べ終わったときに必ず時計を見たほうがいい。気がついたら終電が早い日比谷線はとっくになくなっているだろう。もしくはそんなこと気にしないでひたすら飲み続け、食べ続けるか、だ。
素材の持ち味はそこそこ表現されてはいた。組み合わせも悪くない。しかし、敢えて言えば切れ味が足りない。切れ味がないと素材、そして料理から強い力が沸いてこない。単に綺麗だけの料理で終わってしまう。
いや、シェフはまだ本領を発揮していないのではないか、と思う。いろんな素材をこれまでの技術で料理に仕上げてはいるが、自分の「作品」として堂々と世に問うことをまだためらっているのではないだろうか。
上品なデザートで最後はゆっくりほのかに盛り上がる |
厳しい時代にも関わらず連日満席のア・ニュ。シェフは顧客の反応を見ながら多分これからもっと面白い料理を準備してくるに違いない。
気概あるシェフと最高のホスピタリティを持つサービス陣は「ありのままの姿」でこれからどこに向かうのだろうか。
ア・ニュ(広尾)
住所:東京都渋谷区広尾5-19-4 SR 広尾ビル 1F
東京メトロ日比谷線 広尾駅 2番出口より徒歩5分
営業時間
ランチ 11:30~13:30 L.O.(CLOSE 16:00) \3500, \6000, \12000
ディナー 18:00~21:00 L.O.(CLOSE 24:00) \8000, \12000, \18000
ディナーはアラカルトあり
定休日 :月曜日
電 話 :03-5422-8851